42 ページ42
カメラのシャッター音が鳴り響く。「お〜!」という記者の声が響く。悔しさを滲ませながらグローブを外して打席の方へと向かう。
マスクを外した栗原は「バッティングで見せてやれ!」なんて柳瀬を励ましてくれた。
「すごいね、色んな球種をコントロール出来てるし正確性もあって、本当にすごい。でもあのホームランボールは貰うね。後でそのボールにサイン書いてほしい」
なんていたずらっ子のように顔をクシャりとさせて笑いながら柳瀬に言う。柳瀬は「じゃあ僕もホームラン打ったら貰います!ボールにサイン書いてもらいます!」と宣言して、バットを取りに行く。
大谷もヘルメットを外し自身のグローブを手にしてマウンドへと向かった。
「はー…めっちゃいい球投げれたとに…」
そんな後ろ向きな発言をしながら左打席に立つ。
1球目のストレートの速さに、栗原も柳瀬も「はえ〜!!」なんて大きな声を上げて1度打席を離れて柳瀬は素振りをした。打てるだろうか、絶対かっ飛ばしたい。カメラも向いている、名を知らしめる時は今この時しかない。
左は今の調子じゃ無理だと思い、右打席に立ち直してバットを構えた。
2球目、ボール球に手を出してファールに。
3球目のスイーパーは外角に逃げていく。けれど絶対にスタンドへと飛ばしたかった柳瀬はいつかのように体制を崩し、バットを振って芯に当てると快音が鳴り響き、片手で左中間スタンドへ飛ばした。
「入る?」
「入るよあれ」
マスクを外した栗原は立ち上がり、球の軌道を目で追いながら柳瀬に伝える。
スタンドで大きく跳ねた球を見た時、柳瀬は右手でガッツポーズを作り「よっしゃあ!!」と大きな声を上げた。
「あんな気持ち悪い打ち方でよくやった!」と栗原も柳瀬の頭を撫でる。
「よくあれ打ったね、体制も崩れてたのに。変態だ」
「ボール欲しかったんで…」
「んふふ、そのくらいの執着心あっていいと思う」
そう言って大谷も柳瀬の頭を撫でた。大きな手で、憧れの手で撫でられて嬉しくて仕方がなく、柳瀬の顔は綻んでしまう。
結果は引き分け。互角と言うことで終わり、室内へ引き返すのかと思えば、大谷は柳瀬にスイーパーの投げ方まで教えた。
捕手は相変わらず栗原だ。彼にも丁度いい練習になるだろう。
計5時間の対談と打撃対決と、投球指導。
全て終わった頃には3人とも1試合終わったかのような疲れを見せていた。
595人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時