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試合前の練習で、柳瀬は守備練習をしていた。
投手になっても守らなければいけない事はある。守備が出来ないよりもある程度どこのポジションも出来ていた方がいいとコーチからも言われ毎回守備練習に参加していた。
「Aは元々どこのポジションだっけ?」
休憩中の今宮が、隣で水を飲んで息を整える柳瀬に問いかけた。
「外野手っすね。偶にサード行ってました」
ペットボトルのキャップを閉めながら答えると、すぐに今宮から次の質問が飛んでくる。
「ピッチャーには自分から転向したんだっけ?」
「いや、二軍で練習しようって時にお前外野外れろって。ピッチャーで使いたいとか言われてそのまま」
「無茶言うな〜」
なんて彼は楽しそうに笑う。柳瀬も「外野手出来ると思ったんすけどねー」なんて眉を下げて困ったように笑う。
一応今も外野手として使おうと思えば動けるし、何年も鍛えた守備技術は衰えを知らない。
「ピッチャーと外野手だったらどっちが良かった?」
「えー、外野手っすかね。どのポジションもそうなんですけど、やっぱマウンドに立つ方がプレッシャー凄いですし」
「意外とプレッシャーに弱いタイプ?」
「どうやろ、当たって砕けろ精神でやってるんで弱くは無い方だとは思います」
そんな会話をしていると、「でも前はめっちゃ弱かったやん」なんて目の前を通り過ぎようとした中村が2人の前で足を止めて笑いながら柳瀬に言う。
今宮も「あ、確かに」と同調し、一軍の初試合時を思い出す。
失点は無かったものの、ベンチに戻るとすぐトイレへと向かって嘔吐していた。あの頃はまだ緊張しいな初々しい柳瀬だったのに、なんて2人は目の前の機械のような柳瀬に目をやる。
「なんすか、いいんすかここで吐いても」
「やめろその精神」
拗ねたように言う柳瀬を見て2人は笑いながら背中をトンと叩き、中村はそのまま去っていく。
隣に残った今宮は、「でもそのくらい図太いくらいがいいよ」と喜んでいいか分からない言葉をかける。
「僕図太いですか」
「まぁ、最初に比べたら」
「謙虚にいきます」
そう言って今宮にキメたような笑顔を見せると「柳瀬ー!」と遠くから呼ばれた為、今宮に小さく頭を下げた後に駆けて行った。これから地獄のような守備練習が再開されるとは露知らず。
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Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時