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「見てゼキ、このケーキの型と泡立て器まきさんに買うてもろたんよ」
「え、手動で混ぜるんすか。あの人なら電動買ってくれるだろうに」
休日、柳瀬の自宅。
自宅にこだわりは無く、普通のごく一般的なマンションの中層に住んでいる。そこに大関を招くとエプロンを付けて嬉しそうに牧原に買ってもらったケーキの型と泡立て器を見せた。
「混ぜてると腕に筋肉も付くやろうと思って」
「あー、かもしれないっすね」
そう言いながら大関も茶色のエプロンを付ける。
彼は薄いピンクのエプロンの柳瀬を見るなり「いちごチョコとミルクチョコみたいっすね」なんて思った事を口にする。彼の頭の中はもう甘いものでいっぱいだ。柳瀬はうは、なんて笑いながら「お前可愛いこと言うやんか〜!」なんて大関の背中を叩いた。
自宅での柳瀬のテンションはおかしい。
「ケーキ、作りまーす!」と右手を上げて宣誓し、時折変なステップを踏みながらノリノリで材料を出す。
大関は拍手をしたり、「はい、はい」と一緒にリズムに乗ってあげてお互いがお互いの好みのケーキを作る。1度はやってみたかったのだ。
「野球に出会ってなかったら多分ケーキ屋開いてると思うわ」
「その世界線で出会ってみたかったです」
「ちょっと面白そうよな」
なんて2人で笑いながら2台あるオーブンレンジの中をじっと眺めていた。スポンジが焼けるのを待っている。
数十分待たないといけない為、暇な時間が出来てしまう。トッピングも準備し終えたからかエプロンを取ると大関を手招きした。
大人しく柳瀬に近付くと、彼は冷蔵庫の中からカラメルの垂れたプリンを取り出して大関に見せる。
「今日ゼキ来るっていうから、昨日の夜作ってた」
「…僕の為っすか」
「可愛い後輩のためだよ〜お前可愛いんだから〜」
カウンターキッチンに置いて大関の頭を撫でると、「おいで〜」と犬を呼ぶように大関を呼び、テーブルへと持っていく。スプーンも取り出すと先に椅子に腰かけて「僕プリン作りは自信あるとばい」なんて目を細め、口角を上げて笑う。
大関も椅子に腰かけ、手を合わせて食べ始める。それを楽しそうにニマニマと眺めていた柳瀬は幸せそうだ。
「あ、うま」
「うは、いつもそれやん」
「いやほんとに、美味いっす。店出せますこれ」
「また大袈裟な」なんて言いながらプリンを口に運ぶ。人に出す事を想定して作ったからか普段よりも更に美味しいような気がした。彼を呼んで良かったと心底思っていた。
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Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時