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福岡県久留米市出身、高校では外野手を務めていた。
甲子園に出場はしたが優勝は出来ず初戦敗退。けれどその1試合で魅せた彼の守備と打撃は目を引くものだった。
小学生の頃からずっと外野手として活躍しており、守備は完璧といっていい程鍛えられていた。肩は強く、送球は正確なもの。
その技術を買われてか、福岡ソフトバンクホークスにスカウトされて入団したはいいものの、いざ!と挑んだ練習前にとある事を言われた。
「
「…マウンド立った事無いっすよ」
「絶対いいと思う、1回ブルペン行って投げて来い」
そんな無茶なことを言われて、守備練習をしようとしていた柳瀬は首を傾げながらブルペンへと向かった。
こうして捕手を前に、しっかりと投げるのは中学での父親とのキャッチボール以来だった。まだ部活に入りたての頃は遊び半分で父親に捕手役をしてもらっていたのだが、それ以降は全く。
真っ直ぐ投げてみろとの事で、グローブの中で硬球を握るとミット目掛けて大きく振りかぶった。
柳瀬の左手から放たれた球は伸びがあり、そのまま大きな音を立ててミットの中へと収まった。
フォームなんてしっかりしたものじゃない。けれど、コーチは「いいやん!」なんて褒めてくれる。
「球速も140km!初めてでしょ?すげーなぁ!」
なんて、外野手だった柳瀬にとって喜んでいいのか分からない言葉をかけてもらい、小さく頭を下げる。
その後、殆ど知らなかった変化球を教えてもらい、何度か投げてみると次第に安定していった。
十数球投げた後ブルペンから出て、次こそ守備をと思った矢先にまた監督から呼び止められた。
「ついでにバッティングも見せて」
「え…それならやっぱり外野手としてやっていく感じですかね?」
「いや、バッティングが良かったら投手と打者の両方で使ってみたいと思って」
そう言って笑う監督に、思考回路は停止した。
何を言っているんだと言うような表情をしていたのか、「まぁ、いいから」と柳瀬の背中を押して左打席に立たせる。目の前のピッチングマシンから出てくる球を木製のバットで思い切り弾き返すと、監督は満足そうに頷いた。
「因みに左投げ左打ち?」
「…一応両投げ両打ちで…」
「使おう。そんなの、今まで使ってこなかったなんて宝の持ち腐れ状態だぞ」
そう言って背中を叩かれ、外野手から外された柳瀬は投手兼打者として二軍で活躍するようになった。
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Mexx(プロフ) - 初めて見つけて一気読みしました!!!おもしろくてあっという間!続編希望します!!🥹 (10月4日 23時) (レス) @page45 id: 553f86ba4d (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - 今更ですが一気読みしました!!途中ちょっと泣きそうになりながらも大谷さんともいい対談して、、、最高でした!!!! (8月20日 11時) (レス) @page45 id: 03c5b943b6 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - ばたこさん» またもし次の作品でばたこさんに刺さるものがあれば嬉しいです!ここまでありがとうございました!🙇♂️ (6月23日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - え!!!!!もう終わっちゃうんですか!!!悲しいです🥺私の入院中の唯一の楽しみでした、ありがとうございました!完結おめでとうございます(_ _) (6月23日 8時) (レス) @page45 id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 x他1人 | 作成日時:2023年6月11日 0時