4 ページ4
耳を疑った。
休みまでの練習の時も、時折胸が痛むことがあった。
胸痛なんて学生の頃からよく起きていたし、今回もそんな所かと思っていた。普段なら病院なんか行かないのだが、プロになったのだ。それもメジャーに移籍したのだ。流石に自分の体調管理は自分でと考え方も変わり、面倒だと思いながらも休みを潰して半日検査を受けた。
診察室に戻ると、深刻そうな表情を浮かべた医者と俯き加減の看護師が居た。
何か嫌な予感を感じ取りながらも、丸椅子にキィッ…と腰を下ろす。
「"診察結果を、口に出すのすらつらいです"」
なんて、医師は言う。
「"何でも受け入れますよ"」
診察を受けた本人は笑いながら、拙い英語で言葉を紡ぐ。
すると医師は90度椅子ごと相原の方を向くと、じっと見つめてゆっくりと口を開いた。
「"ステージ4の肺がんです。肝臓に転移も見られ、反対側の肺にも…"」
レントゲン写真を指差しながら教えてくれる。
相原は眉をひそめて説明を聞いていた。「"腹痛やむくみ、食欲不振や体重減少などはありませんでしたか"」と問われると、少し考えた後
「"腹痛は…少し。緊張かと思ってました。"」
そう笑う相原に、医師は更に告げる。
「"手術をしてもかなり、厳しいです"」と追い討ちをかけるように。
一瞬相原は驚いた表情を見せた。眉を上げて、大きな目を更に大きくさせて、まるでアニメキャラクターの様に。すぐに目を細めて小さく頷きながら「"そうですか"」とはにかむ。
「"…でも、出来ないという訳では無い。長期的な入院と、手術である程度は取り除く事は可能です。"」
その言葉に、相原は少し考えた後に
「"1週間猶予をください。監督と相談します。でも、今の僕は手術をしたくないとだけ伝えておきます。"」
そう言って頭を下げる。
「"…いい報告を待ってます"」とだけ返事をして医師はモニターの方を向き直した。
診察室を出た相原は診察料金を支払うと病院を後にして家へと向かう。
相原にも相原なりの考えがあるのだ。
606人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お餅(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました素敵な作品ありがとうございました (6月18日 23時) (レス) @page33 id: 8d7c7e252f (このIDを非表示/違反報告)
ツンデレ殿(プロフ) - 完結お疲れ様です。涙涙で頭が痛くなりました笑とても素敵な作品でした!!本当にお疲れ様でした!! (6月11日 21時) (レス) @page33 id: 62ded70eb4 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどうジュース(プロフ) - 完結お疲れ様です。正直、かなり泣いてしまいました笑笑 前作も読みましたが、凄く面白かったです。素敵な作品を、ありがとうございます。 (6月11日 11時) (レス) id: cf3b69c759 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:宮 | 作成日時:2023年6月4日 13時