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16日、イタリア戦。この日もまた相原はブルペンで調整中の投手の球を受けていた。
鳴り響くミットに打ち付けられる球の音、それがまた心地好くて「めっちゃいい感じ」なんて投手に伝える。
ブルペンからベンチに、そしてマウンドへと送り出すとマスクを外して深呼吸をした。体がダルいような気がする。分からない、気の持ちようかもしれない。病は気から、なんてよく言われるじゃないかと自分の胸を叩いて気合いを入れ直す。
試合は9-3、皆が頑張ってくれた。相原は試合に出たいと願いながらも、足は引っ張りたくないと少し弱気だった。
それに気付いたのは近藤だった。
やはり元チームメイト、分かるのだろう。廊下の隅で気の抜けたように座り込む相原の背中をさすり、声をかけてくれた。
「結構緊張しいだもんね」
「そうなんすよ…緊張はするし色々考えるし…こう見えても繊細なんすからね…」
「知ってるよ。…翔平の所行く?近くにいるよ」
そう言って立ち上がらせると、相原を支えて大谷の元へと向かう。近藤は「また緊張してる」と笑いながら大谷に伝えると相原を引き渡して先にロッカールームへと向かった。
「うーわ、顔色悪」
「緊張と不安…」
「ふふ、リラックスして」
相原を子供のように抱き上げるとそのまま歩を進める。相原は大谷の背中に手を回して肩に顔を埋め、大人しく抱っこされたままだ。しがみついて離れないコアラのよう。
優しく背中をさする大谷の手には相原の心臓の鼓動が伝わってきて、それが嬉しかったのか小さく笑みを零した。
休む暇もなくすぐに飛行機でアメリカへと向かう。
かなりのハードスケジュールだが、ヌートバーは飛行機内でも楽しそうだった。けれど皆があまりにも静かなものだから少し驚いたよう。
アメリカに着くと、時差もあり皆少しつらそうだった。
相原も荷物を引き摺るように持ち、「もう少し日本に居たかった」なんて寂しそうに言う。
「お、顔色戻ってるやん」
目を細めてまだ眠そうな相原に話しかけたのはダルビッシュだった。彼も初日から気にかけてくれており、飛行機搭乗前の相原の顔色の悪さをまたも心配してくれていた。
「何とか」
「あと少し、頑張れ。そして休める時はしっかり休んで」
そう言って背中を叩き元気付けてくれる。やはり偉大な先輩だ。
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お餅(プロフ) - 夢小説で初めて泣きました素敵な作品ありがとうございました (6月18日 23時) (レス) @page33 id: 8d7c7e252f (このIDを非表示/違反報告)
ツンデレ殿(プロフ) - 完結お疲れ様です。涙涙で頭が痛くなりました笑とても素敵な作品でした!!本当にお疲れ様でした!! (6月11日 21時) (レス) @page33 id: 62ded70eb4 (このIDを非表示/違反報告)
ぶどうジュース(プロフ) - 完結お疲れ様です。正直、かなり泣いてしまいました笑笑 前作も読みましたが、凄く面白かったです。素敵な作品を、ありがとうございます。 (6月11日 11時) (レス) id: cf3b69c759 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2023年6月4日 13時