Give you love more (ページ9)

今日:19 hit、昨日:48 hit、合計:140,875 hit

9 ページ9

またも試合終了後、当たり前のように車に乗ってくる大谷を見て、「今度翔平のご飯食べさせてよ」と言うと鍵を挿してエンジンをかける。
いきなりかけられたその言葉に大谷は目を丸くするが、ふふ、と嬉しそうに微笑むと「それでAが喜ぶなら。」と優しく頭を撫でた。

「それと、今度は翔平の車に乗せてよ。もーアメリカの道路怖いんやから」

なんて車を発進させて運転する雫は眉を下げて困ったように笑って言う。
大谷はそれにも「はいはい」と頼ってくれるのが嬉しいのかすぐに返事をして幸せそうに左側の運転席にいる雫の事を眺めていた。

大谷の自宅へ着くと雫は一緒に降りて後部座席の扉を開け、わざわざ荷物を手渡ししてくれる。それがまた嬉しくて仕方が無く、大谷は「雫」と珍しく苗字を呼んだ。
慣れないその呼び方に眉を上げ目を大きくさせて振り返る雫の髪を指に通し、掻きあげるように撫でて額を露にさせると口を寄せて1つ愛を落とす。

「……翔平？」

額に口付けされた事に驚きながら、大谷を見る。彼の瞳にはフィルターが掛かっているのか雫が上目遣いで見上げているようにしか見えず、心をギュッと鷲掴みにされた。

「ん？」

「いや、ん？って…今…」

「挨拶だよ。ありがとうって」

適当に理由を付けると雫の手から荷物を受け取り、もう一度頭を撫でてエントランスへと向かっていった。そんな彼の背中を眺めながら、自身の額に手のひらを当てて「絶対うそやん」なんて呟きながらも、嫌な気はしていなかった。
もう一度乗り込むと、そのまま自宅へと車を走らせる。いつもと殆ど同じ行動なのに、何故か今日は雫の機嫌が良かった。

真っ暗な部屋の玄関ドアを開け、パチ、パチッと柔らかい照明を付けていく。荷物を置くと、服を持って脱衣所へと向かってシャツを脱ぐ。その時、ピロンっと可愛らしい通知音がスマホから鳴った。翔平か？と首を傾げたが相手は違った。

柳田なんか写真ちょうだい

その一言だけ。この人は何を言っているんだと思いながらも、何故か機嫌の良かった雫は今自身が脱いで洗濯機に入れたシャツをスマホカメラに収めた。

【洗濯機に入ったTシャツの写真】
雫さっき脱いだっす

とだけ返事をすれば、その後の返事を見る事も無くシャワーを浴びに浴室に入った。なにか文句を言われていても、なんの写真か指定して来なかった彼の問題だ、と雫は先輩相手にかなり大雑把な性格でいた。