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約束通り、榊と剛は数日ぶりに通学路にあるたい焼き屋に寄り道をした
「白あんと、こしあん1つずつ」と、榊は店主のおじさんに伝えると、作る工程を幼い子供のように目を輝かせて眺めていた。
「おじさん、僕もAと同じの1つずつ。」
数日食べていなかった分を取り戻そうと、2人とも2つ購入。
すると、「いつもありがとうね」とおじさんは優しい言葉を2人にかけ、出来上がった2つのたい焼きと、"おまけ"と称してもう1つ出来たてのたい焼きを手渡した。
受け取れないと拒否しようとするが、「いいからいいから!」とおじさんも引かず結局貰うことに。頭を下げてたい焼き屋を後にした2人、その表情は幸せそのもの。
「ん、ふふ、んまぁ、僕好きだなぁやっぱり。ここのたい焼き。」
榊はたい焼きを頬張りながら目を細める。リスのように頬を膨らませ、口を尖らせながら食べる榊はまるで、抑えの効かなくなった幼子。
一旦足を止め、2人で河川敷の土手に腰を下ろすと、草野球を眺めながら3つのたい焼きを消費していく。
「3つってなると、結構食べる時間かかるね」
と剛は2つ目を食べながら榊に言う。
草野球から、剛の方へ視線を移す榊はなにかに気づいたのか剛の口元へと手を伸ばした。口の端についていたたい焼きの食べかすを指でつまむ。少しだけ、ほんの少しだけ剛は期待した。そのまま食べてくれるだろうか。
「剛はよくクリームとかも口の端や鼻先に付けるよね」
なんて言いながら、つまんだ食べかすをその場で払う。
そんなに上手くいくわけないのだろうが、期待していた剛は少しだけ肩を落とす。その様子に気付いた榊は自身の指と剛の顔を交互に見て
「残念。僕は人の食べかすを食べるような事しないよ。」
いたずらに笑うと、3つ目のたい焼きを食べ始めた。甘さで気持ち悪くなるなんて事もなく、なんならまだ食べたいとすら思ってしまうほど榊は甘いものが大好きだった。
ふと、剛は今の時刻が気になり、河川敷の金網にかかっている時計に目をやった。18時過ぎを示すその時計に剛は3つ目を頬張り食べ終えたばかりの榊の肩を揺する。
「A、もう18時過ぎてる。家庭教師が来る時間じゃなかった?」
そう言うと榊も焦った様子で時計を見る。見間違いなんかじゃない。18時を15分ほど過ぎてしまっており、急いで立ち上がると「ごめん、先に帰るね。また明日。」と剛をその場に置いて通学路を駆ける。久しぶりに門限を破ってしまった。また、罰として晩御飯抜きだろう。
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宮(プロフ) - みきゅさん» ありがとうございました!私も暗いお話しか書けないんで大丈夫だったかなーと思っちゃって( ˊᵕˋ ;)最後までありがとうございましたー!また次もよろしくお願いします!*ˊᵕˋ* (2023年5月13日 8時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
みきゅ - めっちゃくちゃよかったです、自分は文才とかがからっきしなのでからっきしでうまく表せませんが大好きなお話の感じです(T . T)!初めてお気に入り作者さんに登録せていたいただきました(^.^)♡! (2023年5月13日 2時) (レス) @page26 id: b0152c1e04 (このIDを非表示/違反報告)
みきゅ - 最近疲れてたのですが宮さんの小説更新されてて一気に回復しました〜、、!!少しずつ暗い方へ向かってる感じだいすきです(T . T)♡更新お疲れ様です! (2023年5月12日 0時) (レス) @page20 id: b0152c1e04 (このIDを非表示/違反報告)
宮(プロフ) - みきゅさん» ありがとうございます!! ; ;更新は亀ですが気長にお待ちくださると幸いです! (2023年5月7日 22時) (レス) id: e835b41f9a (このIDを非表示/違反報告)
みきゅ - 主さんの書かれる文章はどれもすごく綺麗ですね、、表現の仕方とかとてもとても好きです。これから物語がどうなるのか楽しみです。 (2023年5月7日 22時) (レス) @page12 id: b0152c1e04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2023年5月3日 1時