【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ6)

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こめかみに出来た切り傷。血が止まるまでは絆創膏を貼っておこうと鏡を見ながら自分で手当てをした

制服に血がつくことも無く、ほっと胸を撫で下ろす。真っ白なブレザー、シミを作った暁には母親にどれだけドヤされるか。
その日の晩、父親からも母親からもこめかみの絆創膏について問われたが、「ぶつけた」と嘘をつきその場を凌いだ。

何故男子生徒を庇うような嘘をついたのか、今言えばいいものをと部屋に戻って後悔はしたがこれ以上ヒートアップすることも無いだろうと高を括っていた。

「お、えらいやん！」

「何がやねん」

「余裕もって来れてるやん！」

「ふふ、見縊んなよぉ？起きようと思えば起きれんねんから」

翌朝、十字路の壁にもたれ掛かりぼうっと待っていたA。右から歩いてきた光一がAを見つけるなり駆け足に変わり、声を掛けてきた。
肩に手を置き、隣に並んで学校へと歩を進めると光一は絆創膏がパッと目に付いたのか不思議そうに口を開く。

「ここどないしたん、昨日無かったやん」

「ああ、家の棚で打った」

「何してんねん、痛かったやろ」

親指で優しく撫でるように触れる光一。
それでも少しピリッと小さい電気が走ったように痛かったのか眉をひそめて我慢をしていた。血は止まったが、開くかもしれない。念には念をと母親に勧められ絆創膏を貼っていた。

「治るとええな」と光一の優しい言葉。「せやな」とだけ返事をすると話題を変える為今日の授業内容を思い出していた。
これといって特別な授業も無い平々凡々な1日。5時間目に体育があった事は記憶している。

「保健室行ったら体操着貸してくれるやろか」

「貸してくれるんちゃう？」

「ほんま？良かったぁ。昼休みちょっと行ってくるわ」

目の前に見える学校の正門。くぐるとそのまま真っ直ぐ下駄箱へと向かう。見慣れた景色、毎日同じ行動。靴を履き替え階段をのぼり長い廊下を歩いていく。
皆の視線は光一に。彼はそんな事も気にせずAと会話を続けている。「あぁ」「そぉなん？」なんて返事をしているAだが昨日の事も有り、いつ何されるか分からない状況に気が気じゃない様子。

生意気だの、気に入らないだの、よく分からない言いがかりを付けられたことにまだ少し不満を持っている様子。

カララ、と教室に入る2人。挨拶もしてないのにクラスメイト側から「おはよ〜」と光一に対して挨拶が飛ぶ。
隣を歩いているAは居ない者の様に、…ふと、違和感を覚えた。