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#34. ページ34

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季節は皆を置き去りにしていく
梅雨の時期かと思えば蝉は鳴き、鳴いたと思えば次々地面に落ちていき。
綺麗な紅葉かと思えば枯れかけて、枝には数枚しか残っておらず。

北風が冷たい季節になってきた。
6月末、風邪を引いた2人からかなりの時間が経ちあと数ヶ月で冬休みと言う所まで来ていた。

Aの笑顔はいつの間にかほぼ見なくなり、いつ見ても口を一文字に閉じてどこか遠くを眺めているばかり。
そんなAを見て光一は自身の行いを振り返り、罪悪感に潰されそうになる。


「A」


そう名前を呼んでも、振り返って「光一〜」なんて今までのような笑みも浮かべること無く、彼を視界に入れすぐに前方に顔を向ける。
パッチリと開いた目に何が映っているのだろう。綺麗なクリクリとした瞳、目を伏せて長いまつ毛で視界を覆う。



「…こういちぃ。」


そう小さい声で名前を呼んだ。
驚きながらもAの小さい後ろ姿を見て「どぉした?」と問いかける。彼が無理に顔を合わせようとしないのも気遣いか。


「ボクはお前の事が友達としていっちゃん好きで、ずっとこの関係続けられたらなって思うねんな。」

「…」

「お前は、ボクをどう思てんの。今楽しい?ボロボロになる俺を見てわろてんの?」


一切振り向かないA。背中に光一がいることは分かる、今顔を見たら何も話せなくなると思ったのか。
Aの問いかけに驚きと動揺が隠せない、何でいきなりそんな事を。もしかして気付いていた?見て見ぬふりに気付いて、何も言わず友達を続けてきたのか?

色んな思考が頭を巡る。


「笑ってええねんで、ボク光一の笑顔が好きやねん。何が起きても笑って、ボクもそれ見て頑張んねん。わろてくれた、良かったって」

「…なに、」

「泣いたら許さへんからな。」


ようやく振り返ったAは目に涙を溜めて、鼻をすする。
眉間に皺を寄せ、睨むように光一を見るAに彼は圧倒され頷く事しか出来なかった。少しだけ、2人の間に亀裂が入ったように思えた。

一緒に歩く通学路。会話はほぼ無く、「寒いね」「今日も疲れたな」と在り来りな会話しか交わしていなかった。

少しだけ、いや。Aの中ではその亀裂が毎日の様に1ミリ、1センチずつ入って分断していっていたのだろう。
この心の傷は治る事を知らないでいた。

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作者名: | 作成日時:2022年10月13日 20時

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