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病み上がりだと言うのにまた水はかけられ、噎せ返るような空気の重さを感じながら反抗する気力も失っていた
腕を付いてぜこぜこと肩で息をし、何を言われても反応をしなかった。
「おもんなぁ」と最後に1発、みぞおち目掛けて足を振り蹴りを入れる。大きく咳き込み、男子トイレにはA1人になってしまった。
久々にセットした髪は相変わらず乱れ、綺麗な顔は上履きの底に付着した埃で汚れた。
制服は垂れる鼻血で真っ赤に染まり、落ちる気配は無い。「最悪や…」と呟いては壁に手を付き力の入らない足で自身の体重を支える。
生憎体操服は自宅、保健室からももう借りたくは無い為濡れた制服のまま教室へと戻った。
1歩教室に入った途端、ザワっと小さなどよめきが上がりヒソヒソと何か陰口を叩くクラスメイト。自身の席に戻るとベストを脱ぎ、雑巾のように窓から絞り水を切る。
朝濡らしたスポーツタオル、昼休みにはある程度乾いていた為顔や髪を拭い机にかけて放課後までには乾くことを祈った。
毎日毎日似たような事ばかり。
ここの奴らは幼稚な人間なんだと思うようにはしているが、肉体的にも精神的にもかなりキている為どうにかしてやめさせたいとは思っていた。
早退したい、早く帰りたいと思ってもしっかりと最後まで授業を受け逃げるように学校を後にする。
「…モモ…にするかぁ」
スーパーで果物を眺め、1つ手に取った。
少しいい所の物なのか渡された2000円はすぐに消えお釣りの小銭が数百円だけ財布に入っている。小さい袋を提げ、暗くなる前にと足早に彼の家へと向かった。
ピンポーン…と響くチャイム。玄関が開き出てきたのはエプロンをつけた彼の母親。汚れたAの制服を見ては「どうしたん？！」と焦った様な声を上げ駆け寄ってきてくれる
「お見舞いを…これ光一くん好きやろぉし、」
「お見舞いは嬉しいけど…なんでそんな制服汚れてるの」
「鼻血が出て」
「鼻血だけちゃうやろ？！シャツめちゃくちゃ黒くなってる、」
そんな2人の会話を、窓を少し開け閉じたカーテンの隙間から覗く光一
ボロボロになったAを見て胸がぎゅっと締め付けられる感覚に襲われる。自分が居ないとこんな事になるのかとAに対して申し訳なさが募る
「はは、大丈夫です。でも本当汚れてるんでこれだけ渡してください」
「…いじめ？」
「違うと思いますよ。ほな、早く良くなってって伝えてください」
母親の問いかけをサラッと流し、頭を下げて走って帰宅した
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作者名：宮
| 作成日時：2022年10月13日 20時
