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「寒い」と消え入る声で呟いたA
放課後、全ての授業も終わり帰ろうと荷物を持った時だった。足にも体にも力が入らず、体が小刻みに震えて寒気がAを襲う。
5時間目の体育のせいだろう。保健室で少し強がったのも原因で、無理をしてしまったのか動く事が出来ないでいた。
「なんで、」
と制服の裾を握られどうしようもない光一は、少し焦ったようにAの額に触れた。
あの時とは正反対で熱く火照っており、熱を出していると、風邪を引いていると確信する。
「なんか着さして…」と呟くAに、光一は裾を握る手を離させるとロッカーに向かい必死に何やら探している。
数分して持ってきたのは光一の長袖の体操着。ジャージで、動きやすく多分暖も取れる。
Aに掛けると、すぐに袖を通してチャックを1番上まで閉めて「ふふ」と小さく笑みを浮かべた。
「めっちゃ光一の匂いするわ」
と述べたA。少し体が温まったのか、何とか立ち上がると光一の方に手を置きヨタヨタと2人並んで歩き始めた。
教室を出て廊下を歩き、階段をゆっくり降りて靴に履き替える
足元が覚束ず、危なっかしいAの腰を抱いて自身の首に半ば強引に腕を回させた
「今日は家まで行くで」
「お、男前やぁん」
「放置して帰るアホが居るか」
「おるんちゃう?」
頭痛のせいでぼうっとしているのか、思考も回らず思った事感じた事をポンポンと回らない呂律で口に出す。
支えられながら通学路を歩き、いつもの倍以上の時間をかけ半分まで到達。丁度十字路、あと半分でAの家に着くという所で少し休憩、と少し先の土手に腰を下ろした
両膝を立て、「あぁ…」と辛そうな声を漏らしながら頬杖をつき、俯いたA。吐き気等は無いようだが、頭痛と節々の痛みという典型的な風邪の症状に悩まされていた
そんなAの背中をさすり、落ち着かせようとする光一。友人が苦しんでいるのに何も出来ない自分は不甲斐ない、なんて感じていた
「気持ち悪い?」
「…ジャージ吸ってる」
「それで落ち着くわけないやろ…」
立つのも辛そうなAを見て、光一が目の前にしゃがみ背中を向ける。乗れ、と言うことだろう。すぐに察したAは「今度なんか奢るわ、」と述べると大人しく彼の背中に乗り腕を回した。
奢ると言っても財布の中は空なのにどうするつもりなのだろうか
踏ん張って立ち上がると、そのままAの自宅へと向かう光一。Aは背中に顔を埋め目を瞑っていた
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作者名:宮 | 作成日時:2022年10月13日 20時