【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ26)

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#26. ページ26

人工呼吸、なんて頭に無かった
濡れた制服姿のAを自分と向かい合わせるように抱き、プールサイドに腰をおろした。
自身の制服が濡れるなんてどうでも良くなる程焦っており、周りに大人が居ないかとフェンスの外を見回す。

「…A、起きてA」

小さく揺するが光一にもたれかかったままでピクリとも動かないA。息はある、死んではいない。それだけで1つ安心するのだが目を覚ますまでは油断出来ない
背中を叩きながらAの表情をじっと見ているうち、ある衝動に駆られる。こんなに顔が近くなる事なんて後にも先にもこれが最後だろう

Aの前髪を片手で掻きあげ、自身の額とくっつける。2人の間でコツンとぶつかる音が小さく響き、鼻先が軽く触れる
お互いの息が近く、まつ毛が当たりそうな程。片方の手は背に回し、もう片方の彼の手はAの頬に添えるように置いてあった

Aの冷たい唇と、光一の薄い唇を数秒重ねる。
気を失っていて何も分からないAにと罪悪感は少しあったが、それ以上の満足感が光一の好意を増長させる

綺麗な恋愛と言えるのかは分からない彼の感情。
一方的で、無抵抗な人間に対してしていい事でもないが同性となるとこうするしか手は無いのだろうか

その後、少しAの頬を手の甲で撫でたり、髪を撫でたりした後におぶると忘れ物なんかその場に放置し、保健室へと向かった
大人も見つからないし仕方が無い。次の授業も始まってしまった為、この1時間は同じ保健室で過ごそうと考えていた

体操着に着替えさせ、綺麗なベッドに横になるA。その様子を隣に座り、じっと眺めていた。
カーテンを閉めている為、仕事をしている保健医にはこちらの様子は分からない

頬杖を付き、彼の骨張った指でAのまつ毛や唇をなぞるように触った
掛け布団のおかげか体温も徐々に戻り、30分程すると眉をひそめ薄らと目を開ける。それに気付いたのか椅子から立ち上がり、「Aッ」と少し大きい声を上げた。

「…こういち？」

「そぉ。良かった…」

「…何処ここ」

「保健室、プールに倒れてたから、」

2人の会話が聞こえたのか保健医もカーテンを開け中の様子を覗く
体調や気分、何があったのかと聞かれるも全て「大丈夫」「覚えてない」と答えるだけのA。本心か、シラを切っているのかはAにしか分からない為、それ以上追求する事も出来なかった。
それを隣で聞いていた彼は、すれ違ったいじめっ子に関して口を割らずにいた。