【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ25)

今日:9 hit、昨日:3 hit、合計:4,305 hit

#25. ページ25

プールサイドに散らかったビート板、忘れ物の帽子やタオル。
1つずつ片付け、他にはもう何も無いかと濡れたプールサイドを1周歩いていた

そんな時、入口から駆けて戻って来た生徒が数人。いつものいじめっ子だった。
また来やがった、という感情が自分でも分かるほど表情に出てしまった為、なるべく顔を合わせないようにと俯きプールから出て行こうとした。

だが、いじめっ子に行先を遮られ眉をひそめたまま顔を上げる。「着替える時間無くなるで」と一言、避けて通ろうとするが鏡のように同じ方向に動く為イライラが募る。

「プール入れへんで残念やな」

「あー。せやな。」

「羨ましそうに見てたもんなぁ」

「んー。」

話を聞いているのか聞いていないのか分からない適当な返事。早く終わらせて戻りたい、と言う感情が大きくなっていった。
そんなAの態度が気に入らないいじめっ子は、シャツの襟元を掴むと体重の軽いAを思いっきりプールの方へと投げた。
大きな音を立てて水へと落ちるA、それを見ていじめっ子もプールへ入ると笑い声を上げながら、床に足を着けたAの頭を力一杯押さえつけた。

喋る隙も息継ぎをする隙も与えない。
水中でもがく手は、音を出さずただ水泡を作るだけ。こもった音、目を開けるがボヤけて状況も判断出来ずパニックに陥っていた。

「どのくらい経った？」

「1分」

「早いな〜」

そんな会話をして髪の毛を掴んで、水中からAの頭を出す。
顔を歪め、苦しそうに咳き込むAを見て「だらしね〜」なんて笑うと、もう一度同じように水中へと頭を沈めた。
1分弱。いじめっ子の1人が力無く浮かぶAの手に気付き、不思議に思い水中から引きずり出す。

目を瞑り、薄らと口を開け気を失っているA。初めてそんな状況になった人間を見たのか恐怖と驚きで、プールサイドに横たわらせると逃げるようにプールから出て行った。

階段を降りる際、1人の男とすれ違う。最後を走るいじめっ子が振り返るとその男は着替えを済ませ、1段ずつ階段をのぼりプールの方へと向かっていた。

「…A？」

忘れ物のタオルを取りに来た彼は、奥の方で横たわるAを見つけ、目を細めて呟いた。あんな所で何をしているのだろうか。駆け寄ると青白い肌で、冷えている体のまま気を失うAに気付き背筋が凍る。

長いまつ毛に水滴が乗り、薄い唇は少し開き力が入っている様子は無かった。