【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ18)

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#18. ページ18

自宅に着くと、自転車を降りてカゴの荷物を手にした。
くるりと光一の方を向き直り、先程までの寂しそうな、悲しそうな表情はどこへ行ったのか目を細めてニッと口角をめいっぱいつりあげた

「送ってくれてありがとぉ。気ぃつけて帰ってな」

「ん。どういたしまして。Aも怪我せぇへんように気ぃつけてな」

「はは、流石にもう怪我するん嫌やから気ぃつけるわ」

玄関の鍵を挿し、ガチャンと鍵を開ける。まだ親は帰ってきていないのか家の中は真っ暗だ。
もう一度振り返ると、正直に今日あったことを彼に言った方がいいのか…という思考が頭を駆け巡ったが、心配はあまりかけたくないと彼に手を振った。

彼も手を振り返し、方向転換をすると来た道を自転車で戻って行く。
夜道を1人で。自宅が近付くにつれ、Aの事を母親に話そうかと彼は考えた。

いじめられているのは知っている。今日もきっとあいつらだと言う事は何となく察しが着いていた。
あの時、俺が止めていたらもしかしたら怪我をしなくて住んだかもしれない。そんな後悔の念ばかりが彼の胸を締め付ける。

「光一」

「ん？」

「Aくん、嘘ついてたよね」

「…え？」

自宅に戻った彼はリビングに入ると母親に呼び止められた。
眉間に皺を寄せ、不思議そうに母親へと問いかけると振り返り真剣な表情で口を開いた。
「Aくんの家からあのスーパーまでに坂道は無い」と。
確かによく考えればずっと平らな道、公園はあるけれど特に関係も無いし怪我をする要素なんか全く無い。
それに気付いた彼は少し俯いて口を閉じた。

「何か知ってるんじゃないの」

「…知らへん。」

「原因は分からなくても、いじめられてる所を見たりとか」

「見てへん、」

先程までは母親に言おうかと悩んでいた光一。だが、問い詰められると自分を守ろうとする人間の性なのか、口からすぐにしらを切る言葉が出てきた。
自分でもびっくりだ。今言ったらAのいじめは止むかもしれないのに、そのチャンスを壊してしまった。

「…1年の頃からずっと隣にいたやん。何か感じひんの？Aくんは親友なんやろ？」

「分からへん。なんも見た事ない」

「…原因だけでも分かったら良かったんやけどね」

罪悪感が彼を押し潰しそうになる。
学校で起きている事を、今から言っても遅くは無いのに何故か言葉が出てこないし口が動かないでいた。
…きっと、俺じゃない他の誰かがと他人をあてにしていたのかもしれない。