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「ほなな」と小さく手を振りスーパーに向かい、メニューを考えながら買い物をするA。今日は簡単に牛丼でもと材料を買い、袋を手に提げのんびりと来た道を帰っていた
誰もいない公園、通り抜けようと中に入った瞬間よろけてしまう程強く背中を押され、Aは振り向いた。
いじめっ子だ。「偶然やな〜」と癪に障る笑みを浮かべてはAをジリジリ追い詰める。
「尾けてたん、」
「いやいや、光一くんの家の近くでたまたま見かけただけでぇ」
「それでここに居るって事は尾けてきてるやん」
ポケットに入れた財布が落ちないよう右手で押さえながら下がっていたが、勘のいい相手は体重の軽いAの両肩を掴んで地面に押し倒すと、ポケットを弄った。
出てきたのは長財布。全体重をかけ、動かないように「退けや!!」と怒鳴るAを押さえながら中身を確認すると口角を上げ中身を抜き取った。
金額は7000円。全て1000円札で貰っていた小遣い、漸く10枚貯まった為1万円札に変えてもらって今日、3000円を買い物に使ってしまった。
Aの小遣いで全財産。それが無いと何処にも行けないし何も買えない。
「持ち過ぎやねんて」
主犯格はそう言うと立ち上がり、逃げる様に走って公園を出た。それに続いてもう1人の取り巻きも走って逃げる。
その場に留まっていたもう1人の取り巻きに目もくれず、買い物袋を持ったままAも公園を飛び出した。
「返せや!!」
そう叫びながら全力で2人を追いかける。そしてそんなAを追うもう1人の取り巻き。
ジワジワと追い付き、手の届く位置にAの背中。思い切り出せるだけの力で背中を押すと、足が前のめりになる上半身に追いつけず勢いよく前方に転んでしまった。
「ナイスー!」と遠くから聞こえる主犯格の声。押した取り巻きは盛大に転けたAを見て笑い、その場を後にする。
目の前には道路に散らばった肉に野菜、そして空になった自身の財布。
立ち上がってすぐに袋に戻し、ポケットに財布を突っ込んだ。
「…やば」
自身の右腕、両足。半袖半ズボンだった為小石の転がるアスファルトに擦ってしまっていた。
鮮血が肌を伝い、地面に落ちていく。折角こめかみの傷が癒えた所なのにまた新しくデカい傷を作ってしまったと頭を抱えた。
今ここで言い訳も考えても仕方が無いと、荷物を持ち走ってきた道を戻って自宅方面へと歩を進めた。
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作者名:宮 | 作成日時:2022年10月13日 20時