【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ12)

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#12. ページ12

同日。昼休み、2人でAの席を囲み弁当を食べようとしていた。
机に置かれたバンダナに包まれた弁当箱。開けようとした所で「光一くーん」と教室の外から名前を呼ばれ、不思議そうに席を立った

「ごめん、行ってくる、」

「お〜、行ってらっしゃい」

席に着いたままのAを、少し心配そうな不安そうな表情を浮かべて見つめる光一。それに気付いたのか目を合わせて「どぉしたのよ」とAは問いかけた。
いいや、と小さく首を横に振り「先食べてて」とだけ伝えると呼ばれた方へと歩を進め、教室を出ていった。

さぁて、とAは自身の弁当の包みを開け、箱の蓋をパチンと開封した時。
横から手が伸びてその弁当箱を奪われた。美味しそうな弁当の匂いはほんの少し鼻を掠め、自身から離される。

「返せよ！」

いつものいじめっ子。
ゲタゲタとAの反応を見て楽しんだ後「嫌に決まってるやん！」と返事をして教室を飛び出した。
それを追いかけるA、前方を逃げる様に走るいじめっ子は光一を横切り、トイレへと入ってしまった。

「Aッ…」と光一の呼ぶ声は足音にかき消され、Aもそれに気付くことは無かった。
いじめっ子はもう分かっている。Aに味方が居ないことを。やる事が少しずつ大胆になっていった。

「何してんねん！」

男子トイレへと1歩踏み出した時、指で潰したホースの先を向けられ勢いよく水がAの顔目掛けて噴出される。
前髪、顔は水に濡れ、真っ白だったブレザーに大きなシミが。

手のひらで水を払うと、目の前では弁当箱がひっくり返され便器の中へと落ちていく瞬間が視界に入った
声も喉で詰まり、動きがピタリと止まる。崩れた長い前髪の先から、水滴が1つ床へと落ちていく。

何をしても無駄だ。今更弁当箱を取り上げても相手からしたら痛手でも何でもない。
口をグッと一文字に噤むと気が抜けたようにいじめっ子に背を向け、教室へと戻って行った。
廊下にいた光一はいつの間にかAの席に戻っており、少し俯いて帰ってきたAを見てガタッと席を立った

「A…」

「お、光一」

「お、じゃなくてなんで濡れて…」

白く綺麗なブレザーは、水に濡れ大きなシミを作り少し見栄えが悪くなっていた。
Aの長い前髪は細い束を幾つも作り、チラリと目元を隠しながら水滴を垂らす。
ハンドタオルも無い、嫌な事続きで気分は落ち込んでいた。

席に座り、ギィ…と椅子の背に全体重を預けると光一の問いに口を開いた。