【堂本光一】ブレザー【男主】 (ページ11)

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#11. ページ11

この学校が人気の理由は、勿論偏差値が高い事や裕福な家庭が多い事やらと沢山ある…が、1番は白いブレザーだ
この近辺では珍しい制服、私立という事もあるし少し特別なのだろう。

他校の制服とは正反対の真っ白なブレザーに黒いズボン。
この制服がステータスにもなっており、時折行き過ぎた思考を持った素行の悪い生徒もチラホラと見える。

「…」

Aは自身の机の前で言葉も出せずにいた。
黒いマジックで書かれた暴言の数々。指で強く擦るとジワジワと何とか消えはするが、時間がかかりそうだ。
鞄を横にかけ、自身の持っていたハンドタオルを取り出し廊下の水道へと歩を進める。

そんなAを不思議に思い目で追いながら、Aの机の方へと1歩、2歩と近付いて行った。
そんな2人の様子を教室の隅で見ていた主犯格とその取り巻きは内心ハラハラしていただろう。
バレるんじゃないか、もしかしたら憧れの彼に軽蔑されるんじゃないか。

だが、そんな心配も無駄だったようだ。
Aの机の上が視界に入ると光一は歩を止めた。瞳を動かし、文字を読み踵を返す。
そんな彼の顔は少し強ばっており、頬には冷や汗が伝っていた。

「こういち〜」

廊下から戻ってきたAが濡れたハンドタオルを4つ折りにしながら彼の名前を呼ぶ。
机を極力小さい動きで、音を立てないように消しながら何事も無かったかのように会話を続け、悟られないようにとAなりに頑張っていた。

「光一って俺の母親と会った事あるっけ」

「…いや、無いかな」

1年の頃からAの自宅まで迎えに行っていた光一。
チャイムを鳴らし、母親が出て行く前にAが玄関へと向かう為意外にも顔を合わせ事は無かった。ここ最近は十字路待ち合わせな為余計に母親の顔なんか見る機会が無い。

消し終わると、黒く汚れたハンドタオルをじっと眺めゴミ箱へと捨てた。
そして席へ戻ることも無く、光一の方へと歩を進めしゃがみこみ彼の机に顎を乗せた。

「今度連れて来いってさ」

「俺を？」

「そぉ。世話になってるから会わせろって」

「はは、律儀な人なんやな。俺はいつでも行けるで」

光一のその自身の親を褒める言葉。内心嬉しく思い、つい小さい笑みを漏らしてしまう。
彼はいつでも、とは言ってくれたがA自身の気分が乗らない為会わせるのはまだ先に、と言う事に。

満開だった桜もいつの間にか花弁の絨毯を作り、緑の葉が混ざってきている。心地良かった気候は少しずつ暑さを増して来ていた。