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ep:02 ページ4
久しぶりに会った彼女はガラリと雰囲気が変わっていたものの、どこか昔の面影を感じた。
一人称が僕のところとか、
何を考えてるのかわからない表情とか、
……困ったときに必ず、言葉を濁すところとか。
「あの反応を見る限り、歌うのはまだ好きなんだろうな」
そう思いながら、さっき彼女が口にしていた言葉と持っていた物を思い出す。
「ゲーム配信者、か。なんでまた……」
「僕がゲーム配信者なのが、そんなに信じられない？」
「わぁっ……びっくりした」
「全然驚いてるように見えない」
てっきりお会計をすませたら俺のことなんかしかとして帰ると思ってた、というと、本当はそうしたかったけど久しぶりに会った相手を置いてくのもどうかと思って、と返される。
そういうところは律儀だよなと思っていると、彼女が突然ペン持ってたら貸して、と言ってきた。
俺は偶然ポケットに入っていたボールペンを彼女に渡す。
すると、彼女はレシートの裏に何かを書いて、ボールペンと一緒に渡してきた。
「ComeT……？」
「それで調べれば、少なからず僕の実況動画が見れるはずだから。
嘘だと思うなら……いや、まあ、見ろとは言わないけど」
「帰ったらみる」
「……そう」
わざわざ教えてくれるとは思わなかったが、一応まだ信用されてるって思っていいのかな、と淡い期待が浮かび上がる。
と同時に、自分のことについても話すべきかと悩んだ。
正直、今の彼女に話していいのかわからない。それでも、
「あのさ、雨彗」
「何？」
「あー……実況って乙女ゲーム？ このレシート見る限り……」
「そうだけど。文句があるなら見なくていいし、僕もう帰るから」
「文句はないけど。気をつけて帰れよ」
そういうと、今度こそまたねと彼女が珍しく微笑んで手を振った。
俺は徐々に遠くなる彼女の背中をしばらく見つめた後、一人ため息をついた。
『涙の歌、僕は好きだよ。いつまでも聴いていたい』
『僕には歌う資格なんてなかったんだよ……！』
『もう、僕の前で歌わないで……ごめん……』
「伝え損ねたな」
そう呟いた瞬間、ポケットに入れていたスマホが震えだす。
そういえば連絡先も聞き損ねたな、と後悔するのはまた少し後のことであった。
続く
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作者名：藤宮 | 作成日時：2018年7月18日 12時
