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休日。
まだ七月が始まったばかりだというのに４０度近い猛暑が続く中、僕は白いTシャツにジーパン、薄手の上着を身にまとい、スマホと財布を持って、街中へと向かった。
冷房の効いた電車内でなら少しは涼めるかと思ったが、案の定満員電車に巻き込まれる。
これでは涼むどころか人混みで空気が蒸して、暑くなる一方だ。
僕は目的地の最寄り駅に着くと急いで電車を降りお目当ての商品を探すついでに、どこか涼めそうな場所がないかを探す。
「とはいっても、どこもかしこも節電だのなんだのって冷房ガンガンに効かせてないんだろうなぁ。我慢のし過ぎで死んだら何も意味ないのに」
お金がないと生きていけないのもなんとなくわかるけどと思いながら、ゲームが売られているコーナーへと足を運ぶ。
新作の乙女ゲームを見ながら、気になるものをいくつか手にとり、お会計へ行こうとしたが、ふと見覚えのある男性が視界のはしに見え、足を止めた。
「あれは……涙 ？」
「……？ あれ、お前……」
独り言を呟いたつもりが相手にまで聞こえていたらしく、彼はこちらへ振りかえるや否や僕のことをじっくりと観察する。
「雨彗 、だよな。久しぶり」
「ひ、久しぶり、えっと……海空 くん」
「さっきは名前で呼んでただろ」
「それは無意識に、その」
「ふーん、まぁ、いいけど」
ところでこんなところでなにしてるの？ と彼は聞くなり、僕が手に持っているソフトをみて首を傾げる。
その反応をみて当然といえば当然かと納得すると、口を開く。
「僕、これでも今はそこそこ知られてるゲーム配信者なんだ」
「学生時代、あんなに毛嫌いしてたのに？」
「……気が変わったんだ」
「そう。じゃあ、もう歌 は歌ってないの？」
「……」
もう、歌うつもりはない。
たったそれだけを口にすればいい話なのに、この瞬間だけ僕はその言葉をいうことをためらってしまった。
おかげで、気まずい空気になってしまい、僕は慌ててお会計するからまたね、とその場を立ち去ることしかできなかった。
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作者名：藤宮 | 作成日時：2018年7月18日 12時
