お迎えと思い出 ページ9
小森が書いてくれた紙を折りたたみ、
鞄にしまう。
そうしてデスクに座ったはいいものの、
『する事が…ない。』
先程の雰囲気とは180度変わり、
皆、黙々と仕事を始める。
気持ちよさそうに眠っていたはずの佐野はいつしか目を覚まし、
鳴り止まない電話にスマートに対応している。
…一応、仕事は出来るらしい。
『白濱部長、私は何をすればいいですか?』
仕事をしない。
という事が返って苦手な私は口が勝手にそう尋ねる。
亜「あぁー。
Aちゃんは、駅前までお使い頼めるかな?」
普段、母親からも滅多に口にされない 「お使い」というワード。
この歳になると一見「雑用」ともとれるその言葉に、
入ったばかりだからさ。ね?
という白濱部長のダメ押しの一声で納得した。
『分かりました。
何を買ってくればいいですか?』
亜「いや、正確にはお迎えなんだけど…。」
お使いとお迎えって大分違いません?
と、喉仏にまで出かかっている言葉を飲み込んだ。
『誰のですか?』
亜「中務裕太 って人なんだけど。」
中務裕太
○赤髪
○関西弁
○ちょっと怖い
○身長高め
と書かれたそのメモの端に
こんな顔!!
と、本人に見せたら必ず怒られるであろう悪意のある絵でそう描かれている。
いやこれ絶対数原さんでしょ。
会社から駅までは10分程度。
朝も会った受付の2人からの視線を通り抜け、外へ出た。
あ、ここ。
ふと見覚えのある公園に足が止まる。
ゆっくりと桜が舞い落ちるその場所には、
決して思い出したいとは言い難い思いが詰まっている。
私の、
初めての恋が始まって、
初めての恋が終わった場所。
『はぁ…。』
昔の苦い思い出を噛み締めながら、
駅へと足を向けた。
?「あれ、A?」
神様は、会いたくない人ほど
…出会わせる。
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作者名:Honey | 作成日時:2018年3月24日 19時