あべちゃんせんせーのカルテ・3-1(緑+紫+青黄) ページ38
ここはいわゆる町のお医者さん、素能総合病院。
梅雨にも負けず患者さんはやって来ます。
「…ふっか、まだ来てない?」
「はい、まだ」
昼過ぎから降りだした雨が強くなり始め、窓の外を見てため息をつく。
『テスト終わったら来るねー』なんて言ったくせに、もう夕方になろうとしているんだけど。
ここの所あまり調子が良くないふっかは度々熱を出したり、小さな発作がちょこちょこ出ていて…まぁ、この時期ってのもあるけど…
「ったく、ふっかのやつ…」
「心配ですね。次の患者さん終わったら電話してみましょうか?」
「んー…、頼める?」
「はい。じゃ、次の方お呼びしますね」
ラウに呼ばれて次に診察室に入ってお婆ちゃんが入ってくる。
「雨、酷くなって来たから気をつけて帰って下さいね」
「坊ちゃん先生、ありがとうございます」
診察室の扉が開くと待合室はざわついていて、子どものグズるような泣き声がした。
「もー泣くなって〜」
困ったような声。
「ッ、グスッ、グスッ、…ゲホッ、グスッ、」
「…ふっか?」
「ちょ、せんせ、たすけて、」
小さな子どもを抱っこしたふっかが眉を下げて俺を見る。
ふっかのお腹に顔を埋めてしがみつく子どもの顔を覗き込むとよく知った顔。
「えっ?ひーくん?」
え?何でふっかと?
俺と目が合ったひーくんの顔がみるみる歪んで、堰を切ったように声を上げて泣き出す。
「っ、ぅあああ〜ッ、ゲホッ、ぁああッ、」
「どしたの?お兄ちゃんは?」
びしょ濡れの背中をポンポンしながら聞くと、ひーくんの動きが止まる。
「にぃに…っ、グスッ、にぃにぃッ、ぅあああーっ、ゲホ、ゴホッ、」
「わ!わ!泣くなって〜、ちょ、せんせ!」
「ごめんごめん。ふっか、この子とどこで会ったの?」
「学校の近く。何聞いてもぴーぴー泣いてばっかだし、どーしよっかなって。ここ連れてきたら知ってる人いるかと思って」
ラウがテキパキとひーくんの髪をタオルで拭きながら問いかける。
「ふっかさんは?濡れてない?」
「うん。タクシーで来たし」
「ひーくん、お外に1人でいたの?お兄ちゃんは?」
「にぃに、ッ、ばす、のッ、とこぉ…ッ、ゲホッ、」
「え?」
「ゴホッ、ばすのとこで、ッ、グスッ、ゲホッ、ぐしゃって、ねんね、ッ、ゲホッ、」
バス…?バス停?…で、ぐしゃって、ねんね…って…
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うの(プロフ) - ぽんさん» コメントありがとうございます。細々と更新していきますので暇な時はまた読みに来て下さいね!(^^)! (2022年8月9日 16時) (レス) id: 312a545c23 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん - 突然コメント失礼します。密かに読ませてもらっています。紫さんの出てくる作品が好きです。こぎつね、もしや紫さんもレギュラー参加の予定ですか?可愛いですね。これからも色んな短編集を楽しみにしています。 (2022年7月30日 15時) (レス) id: 06d404138f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うの | 作成日時:2021年11月1日 11時