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家に着くと灯りがついていて、兄貴が火を起こしてくれていた。

「蓮、ごめんな、気づかなくて」

「ううん。兄貴は大丈夫?」

「うん。それより…」

「罠に…」

「罠?」

兄貴は俺の腕の中の羽織に包まれた塊から発せられる血の匂いに眉を寄せる。

「ひかる!」

外にいた彼が兄貴に駆け寄る。

「お願い、助けて!大事な家族なの!」

「…蓮。すぐに舘さん呼んで」

「えっ…」

「このままじゃ朝まで持たない」

「ぅ…うん!」

なんだ…彼は兄貴の知り合いだったのか。

雨の中人里に急ぐ。

いつかの時と逆だ、なんてこんな時でもあの子のことを思い出してしまう。




「…よし、おしまい」

舘さんはパチンと足の傷を縫合した糸を切って、手際よく包帯を巻く。

目の前の子どもは血の気のない唇で必死に呼吸している。

「しばらくは毎日来るね。肺の音が良くない。傷の感染も怖いし。それにこの子、」

「あの!」

彼が舘さんの話に割って入る。

「ありがとうございました」

「ううん。でもさ、」

「あ、舘さん。俺の痛み止めの薬も欲しいな」

今度は兄貴が割って入る。

「明日用意して来るね」

「ありがとう」

夜中の暴風雨のことなんかなかったかのように朝日が昇る。






「ていうかさ、俺一応人間のお医者さんなんだけど」

帰り際に舘さんから発せられる衝撃の一言。

「りょうへい、大きくなったね」

「えっ?!」

「はい。れんさんには気づいてもらえませんでした」

「ええっ?!」




あのフサフサの尻尾をフリフリしてた可愛いりょうへい…?はにかんだ笑顔の可愛いりょうへい…?




待って、待って、待って…





鮮やかな思い出は嵐が消し去って、新しい日々の訪れを告げた。

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うの(プロフ) - ぽんさん» コメントありがとうございます。細々と更新していきますので暇な時はまた読みに来て下さいね!(^^)! (2022年8月9日 16時) (レス) id: 312a545c23 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん - 突然コメント失礼します。密かに読ませてもらっています。紫さんの出てくる作品が好きです。こぎつね、もしや紫さんもレギュラー参加の予定ですか?可愛いですね。これからも色んな短編集を楽しみにしています。 (2022年7月30日 15時) (レス) id: 06d404138f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うの | 作成日時:2021年11月1日 11時

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