5 ページ14
ママと出会ったのは病院だった。
めめが1人で餌を探しに行っている間、幼かった僕はフラフラと院内を歩き回っていた。
「っ、…？」
濃厚なバニラとほんの少しの檸檬、そして甘やかな花々の香りがふわりと漂う。
導かれるように病室を覗く。
「ッ、ひかる…っ、」
パパが横たわるベッドの傍、床にへたり込んで頬を濡らすママ。
絶望に塗れたその顔は食欲を刺激した。
嬉しくなってめめにそのことを話すと、めめは「違う餌を探そう」と言った。
僕はどうしてもあれが食べたくて駄々をこねた。
数週間後の深夜、僕らはママに会いに来た。
この間とは違うむせ返る程の百合の香りとキャラメル、それからダークチョコレートとラベンダー。
「すげえうまそう」
「でしょ」
反対していためめも舌舐めずりしながら喉を鳴らす。
僕らが食事をしようとしたその時、ママがうっすらと目を開けた。
「っ、！！」
あり得ない状況に体が硬直する。
だって、普通の人間には僕らの姿は見えないし声だって聞こえないはず。
「…会いに…来て、くれた…の？」
あの時と違ってちょっと掠れた、甘くて柔らかい声。
ママの指が僕の頬に触れる。
知らなかった感情が僕の中に流れ込む。
受け止め切れなかった感情は涙となって溢れ、それでも僕は泣きながらママの中で眠る餌を貪った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うの(プロフ) - ぽんさん» コメントありがとうございます。細々と更新していきますので暇な時はまた読みに来て下さいね!(^^)! (2022年8月9日 16時) (
レス) id: 312a545c23 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん - 突然コメント失礼します。密かに読ませてもらっています。紫さんの出てくる作品が好きです。こぎつね、もしや紫さんもレギュラー参加の予定ですか？可愛いですね。これからも色んな短編集を楽しみにしています。 (2022年7月30日 15時) (レス) id: 06d404138f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うの
| 作成日時：2021年11月1日 11時
