S.S.S (ページ8)

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夏休みに入り深澤さんとはしばらく会わないままだったが俺はそのほとんどを勉強に費やした。

学校が始まっても深澤さんは登校せず、最初こそざわついたもののすぐに深澤さんのいない教室にみんな慣れた様子だった。

慣れないのは俺だけか…

父さんの話をされるのも、一方的にレベルの低い話をされるのもなくなったらなくなったで何か…何となく…

将来自分が継ぐかもしれない病院へは当然行ったことくらいある。

風邪を引いた時とか小さい頃に転けて5針縫った時とか。

だから、小児科の入院病棟なんか入ったことなかった。

方々から聞こえる泣き声と、話し声、笑い声、それに消毒液の匂い。

薄いミントグリーンの壁とカラフルな装飾。

初めて足を踏み入れた場所はなんだか不思議で、想像よりずっと明るかった。

深澤さんは大部屋にいた。

恐る恐るカーテンに手をかけると、

「今寝たばっかだから起こすな」

と背後から冷たく言われた。

「…お前、阿部先生の…？」

振り返って固まっていると、動きづらそうにベッドから降りて近寄ってくる。

「ふーん」

ジロジロと舐めるように顔を見られたかと思うと納得したように顎に手を当てうんうんと頷く。