S.S.S (ページ50)

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「いやだ！いかない！」

当日、案の定翔太は駄々をこねた。

普段はふっかのことが大好きで、なんなら自分から行きたがるくせに何を察したのか朝から行きたくないの一点張り。

「しょうた、ふっかのこと大好きじゃん。いつもしょうたのこと診てくれてるでしょ」

「今日はやだ！」

頑なな翔太の顔を覗き込むと、翔太はぎゅっと目を閉じて逸らす。

「どうして痛いこと何もしないよ？」

「でもやだ！」

「何で？今日が嫌なの？」

「ちがう」

「じゃあどうして？」

「だって、」

と言い淀んだ翔太は唇を噛んだ。

「りょうたが泣きそうな顔してるから」

「え？」

「ふっかのところにいったら…りょうたのこと、守ってあげられないじゃん…」

翔太の泣きそうな顔に、息が止まる。

『りょうた、はやくこいよ！』『みて、りょうた！100点！』『いぇーい！またおれのかち！』『うわっ！虫！りょうた、とって！』『りょうたのこといじめんな！』

目を閉じて思い出すのは勝ち気な双子の兄のこと。

あの日、たった数秒間の出来事だった。

目の前の車、兄の手の感触、急ブレーキの音、一面の赤。