ようこそ、歌姫。 (ページ2)

今日:19 hit、昨日:10 hit、合計:10,329 hit

M1 ページ2

・

遡ること数ヶ月前。

入学式も終わり、軽い自己紹介を終え、次は部活を決める時期。

席が近くて仲良くし始めた汐チャミとも、話の主は部活のことが多い。

｢A何部入んの？｣

｢んー、入る予定はないかな｣

そう、私は部活に入る気がまるでない。中学時代は部活のせいでかなりしんどい思いをしたし、部活をするくらいならバイトでもして少しでもお金を稼ごう、と思ったから。

ちなみに汐チャミは水泳部のマネージャーになりたいらしい。

そしてこの時期の放課後、下駄箱へ向かう道中の廊下が鬱陶しく煩わしい。先輩たちが1年生の部活勧誘で声を張り上げてるからだ。

その中でもずば抜けて声が大きかったのは

｢けーおんがくぶー！！！入ってくれませんかー！！！！！｣

この地域の高校ではあまり無い、軽音楽部の勧誘だった。

勧誘している先輩は2人いて、ひとりはクソデカ声でキレ長の目の人、
もうひとりは通りかかる人に声をかけている、スタイルがすごく良い人だった。

まあ、私には関係ないと思いながら先輩たちの前を通り過ぎようとしたとき

「ねぇキミ、」

とあのスタイルのいい人に声をかけられてしまった。

「軽音、入らない？」

大きい目からなる眼圧に今にも負けそうだ。
てか、スタイル良いだけじゃなくて顔も良いのかよ、羨ましい。

『ごめんなさい。部活に入る気がないんです。わたしはここで失礼します。』

するとその人は驚いたように目を大きく開いた。
何か言いたげな様子ではあったが、これからバイトのシフトが入っているので遅れる訳には行かない。ので退散した。

「声、ええな」
「まじでそれ。仮に軽音入ってきてくれたら、純喜のボーカルの座あげちゃおうかな？」
「おい」