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その日から自分が何のために生きているのか分からないほどに記憶をなくした。
知っていることは何もない。
目が覚めるたびに「あなたのお母さんよ」と言ってくれる女性とご飯を食べたり話をしたり、家中に貼られているメモを見ながら最低限の生活を送り、何も覚えていることが無いことさえもなんなのか分からないほど。
そんなある日、人がやってきた。
なんだか可愛らしい顔の整った男の子が私の名前を呼んで悲しそうな顔で目の前に座っている。
「なんで私の名前を知ってるの?」
「Aは覚えたないかもしれないけど俺はAのことを家族の次にたくさん知っているんだよ。たくさん一緒に話したし、たくさん一緒に遊んだし、たくさん一緒に笑ったし....」
「なんで泣いてるの?」
「嬉しくて....Aと久しぶりに会えてことが....」
「泣いちゃうほど?」
「うん、泣いちゃうほど嬉しいんだ」
泣いている目の前の男の子は嬉しくて泣いてるんじゃなくて悲しくて泣いているんだと思った。
だからなんだか分からないけど私もつられて涙が溢れてきた。
「なんでAが泣いてるの?」
「わからない。わからないけど悲しいの。あなたが泣くから」
「A......」
ひたすら泣き続けるから思わず立ち上がって隣に腰を下ろして抱きしめてあげる。
「泣かないで。嬉しいなら笑って。ほら、私も笑うから」
その時ふわりと何かの香りを感じた。
「良い香り.....」
その香りはなんだか懐かしくて暖かくて美しい感じがした。
「金木犀だ」
「わかるの!?」
「うん、なんかわかった。すっごく安心する好きな香り。これは覚えてる」
「ちょっと待ってて」
そう言ってその人が見せてくれたのは私の字が書いてある日記帳みたいなもの。
「これ、読んでみて。Aが前に書き残してたものだから。その匂いの思い出だよ」
読んでみればなんだか心がじんわりと暖かくなってきて微かに香りと文章がマッチしてくる。
「ジス....」
「思い出した?」
「分からない...けど、あなたがジスで私の彼氏だった人...もしかして今でも.....?」
日記には彼氏との思い出が書き出されていて金木犀の香りを身につけている目の前の男の子がリンクした。
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miwol(プロフ) - るるるさん» いえいえ!終わりを迎えさせていただきました!ここまで楽しく読んでくれてありがとうございました!思ったようなエンディングを迎えてあげることができず....またシュアを書ける機会があれば幸せなシュアをご提供しますね^_^ (2020年7月26日 23時) (レス) id: 1e4145c4eb (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - miwolさん(*^^*)お返事ありがとうございます…!シュア編…彼の純愛に私まで涙が…(TT)あともう少しで終わってしまうのは寂しいですが、楽しみにしています…! (2020年7月25日 23時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
miwol(プロフ) - るるるさん» コメントありがとうございます!シュアペンさんなんですね!ごめんなさい..実はもうこのお話はこのまま終わらせるつもりで...この後少しシュア編を付け足していくのでそちらでお楽しみいただければと... (2020年7月22日 0時) (レス) id: 1e4145c4eb (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!ジョンハンの長編から読ませていただいて、一気に読んでしまいました!素敵なお話ですね(*^^*)シュアペンなので、幸せになってほしいです… (2020年7月20日 16時) (レス) id: f77ccef066 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:miwol | 作成日時:2020年2月1日 23時