episode35 ページ34
珍しくAから仕事で帰りが遅くなると連絡があった。
ご飯も待ってようと思ったけど何時になるか分からないからと言うので仕方なく一人で食べる夕飯はどこか味気がなくて。
「ヤオンイ、一緒に食べるか」
帰ってきてからご飯は与えていたけど、あまりにも寂しい夕飯にもう一度少しの量のエサを器に入れた。
自分の足元にその器を置き、自分もご飯を食べ始めればゆっくりとこちらに近づいてきてエサを口にし始めた。
「今日はお前がいてくれてありがたいな」
ムシャムシャとヤオンイが食べる音を聞きながら、テレビも付けずに静かな夕食を済ませた。
食べ終わったところでAはまだ帰ってこない。
「一人だった時、この時間に何してたっけ」
こんな独り言も虚しく、ヤオンイがニャーとひと鳴きしてこの会話は終了したようだ。
テレビをつけてもどこか集中できなくて、お風呂に入って歯磨きをして後は寝るだけの状態でAの帰りを待っていれば、ようやく疲れた様子でAが帰ってきた。
「ただいまぁー」
「おかえり。ご飯できてるけど風呂先に入る？」
さっきまで寂しかったことなんて顔にも出さず、なんともなかったかのようにそう提案すれば「ありがとう、お風呂入ってきちゃうね」とそのままお風呂場に消えていった。
そろそろお風呂から出てくる頃かなというのを見計らってご飯の支度をすればいい匂いに釣られて風呂上がりのAがキッチンにやってきた。
「はぁー、ウォヌだ。今日は疲れた」
そう言いながら後ろから抱きつくように肩に顎を乗せてきた。
「お疲れ。もうすぐできるから座って待ってて」
「甘えてるんだよ？なんか冷たいなぁー」
「そんなことないだろ。ほら、危ないから」
「ウォヌも私がキッチン立ってるとこうやってしてくるくせにー。大人しく待ってますよーだ」
憎たらしい顔をして着席したAは何かに気がついたようにクフフっと喉を鳴らし笑っている。
「一人で寂しかったんだね」
そう言うAのほうに振り向けば、しまった、ヤオンイの器を食卓の足元に置きっぱなしだった。
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作者名：miwol
| 作成日時：2020年4月28日 0時
