検索窓
今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:13,465 hit

5 【北山side】 ページ5

「今何時…?…わぁっ!?…え、ちょ…」


藤「ん?」


時計を見ようと目線を上げたら、めっちゃ近くに藤ヶ谷の顔があった。


「びっくりした…」


藤「…今更?」


…伝わってねぇなこれ。無意識かよ。


「…近い。」


藤「え、あぁ…ごめん。」


本当に申し訳なく思っているのかは不明だが、俺に覆いかぶさってくるようにして覗き込んできていた藤ヶ谷は、隣のシートに腰を下ろした。


藤「…改めて、おはよ。」


「お、おはよう…」


藤「…」


「…?」


俺のことをじーっと見つめてくる藤ヶ谷。


黒みがかった瞳は、朝日の明かりを受けて柔らかく輝いているように見える。


藤「…頭。」


「…ふぇ?」


頭…がどうした?


藤「貸して。」


「ん…」


突然藤ヶ谷は俺の頭に手をのばし、優しく撫でてきた。


「…なんで?」


藤「…寝癖。」


「…あ、」


昨日は遅くまで練習していたせいでお風呂のあと乾かさずに寝てしまった。


そのせいで、濡れたまま寝た髪は俺の腕に擦られてクシャクシャになっていた。


「ありがと…」


藤「あと、ここ。」


そう言って、俺の顎をなぞるように指を滑らせる藤ヶ谷。


「んん…?」


藤「よだれ、垂れてた。」


「…?!」


ってことは…こいつの指に俺のよだれが?!


「手、どーすんの?!」


藤「…え、どうするって?」


…まじで無意識なのか?


「いや、汚いかなって…」


藤「え…別に、?」


「…そ、っか。」


藤「…ん」


そうして俺たちは、しばらくふたりきりの車内をなんとか言葉を紡いでやり過ごしていた。

6 【千賀side】→←4 【藤ヶ谷side】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
175人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:桜桃 | 作成日時:2022年9月24日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。