あるお膝の上 ページ5
✥
私の言葉に
Aが「あー……、まあね」
と言いづらそうに淀む。
彼女は特務課勤めの役人で
休みの日なんて無いに等しい。
それに加えてAは
安吾の恋人なのだから……
安吾は今日のAの動向は
把握しているはず。
「歯切れ悪いけど……
もしかして『誰の』ところって
言ってなかったり？」
同意を求めるように
少し首を傾げて問いかける。
Aがやおら頷いた。
否……駄目でしょう。
私が君を好きなのも
私が安吾を恨んでいるのも
君が安吾の恋人なのも
知っている上で君が此処にいてさ
「じゃあ、安吾にばれると困る？」
「え？ それは無い……」
えー……無いの？
「だって第一
安吾さんと太宰さんって
昔からの友人でしょ？」
「友人……
うーん、うん……まあ？」
此処は誤魔化すことにした。
Aが安吾を信頼している事を
嫌なほどに判ったから。
あーぁ……
どうしたらこの手に
落ちてきてくれる？
私らしくもない
損な役回りに内心 苦笑する。
「そ……、まあいいや。
それよりA、お仕事
すごく忙しいって聞いたけど……
ちゃんと休んでいるかい？」
「ぼちぼち……。
政府の犬って良く言われるよお……」
んっ、と声を漏らして
凝りを解すように伸びたAの
白い首筋が陽光に照らされる。
その美しさにある種
畏敬の念さえ芽生えるような気がする。
私はAの横に座ると、
畳に着いていた手を取って
その薄い肩をこちらにもたれさせる。
膝枕なんて女の子がするから
絵になるのであって
私がしたところで……って感じ？
君にされたいのは私の方なんだけど……
「ほら、堪能したまえ」
「太宰さんのお膝を？」
「いいや？ 久々の休息を、だよ」
✥
続く
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はな(プロフ) - 私も待ってます！ (2022年4月9日 23時) (
レス) @page5 id: 769fe6ecc6 (このIDを非表示/違反報告)
凛月 - 初コメ失礼します！この作品、とても面白いので、これからも更新頑張ってください！応援しております！ (2020年7月30日 0時) (レス) id: 50b8d2a48c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やみこ。 | 作成日時：2020年7月4日 13時
