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本当に心配だから伝えたかった。
でも真面目な顔だと引かれるかな、と思って冗談っぽく揶揄うように言ったのだけど。
そのまま沈黙が流れ、何か変な事言ったかなって自分の言葉を心で反芻してもおかしな事は言ってないはず。
ん?って首を傾げて返答を待つと、彼は目をゆっくりと細めた。
その目は柔らかくて優しくて。
心があたたかくなるようだった。
それが何故か私の心をざわつかせた。
彼は何かを言いたそうに口を開け、また閉じて。
躊躇したように目が揺れて。
目がやっと合わさった時、照れたように“はい”って言葉を返してくれた。
急に直視できなくなって、自分の身なりが気になり手櫛で髪を整える。
眼鏡を掛けていて良かった。
視線がバレずに済むから。
今朝、眼鏡についた悪態は取り消そうと思った。
「お姉さんは、このビルの方ですか?」
そういえば私の素性は話していなかった。
私が事務所の人間だと言う事は隠したほうがいいと思った。
“マネージャーにバレないように”あれこれした話などあったし、せっかく楽しくお話出来たのにこの雰囲気を壊したくないなって。
会う事もないだろうし。
嘘を貼り付けた。
『はい』
「そういえば自分の名前、名乗りましたっけ?キムソクジンっていいます」
そう言って満面の笑みで待つのは、私の名前を催促しているんだと気付く。
既に嘘をついてしまった私は、友人の名前を引っ張り出してきて伝える。
『ユナ…です』
ソクジンさんは視線を下げ、自分の心に記すように小さく、
「…ユナさん」
と、呟いた。
その姿に良心が痛み、発言を取り消そうと口を開けると、パッと前を向いたソクジンさんがランチバッグを持ち上げ私に見せる。
「じゃあこれは洗ってお返ししますね」
『そんなの気にしないで下さい』
「口実になるじゃないですか。また会う為の」
あまりにも唐突に。
意外な言葉が降ってきたから、心臓が変に高鳴ってしまった。
この場だけのものと思っていた私とは違って、次を考えていた事に、不覚にも胸の中が一気に嬉しさで満たされた。
さっき、口が上手いって思った人の発言を真に受けちゃダメなのに。
これはリップサービスだ。
そう気持ちを変換させ、わざと茶化すように話す。
『そっか、わかった!また鶏胸肉以外のもの食べたいからですね?』
“閃いた”っていうように人差し指を立てると、彼は目を細めてにっこり笑う。
「期待してます」
ほら、他意はなかった。
危うく恥をかく所だ。
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lia(プロフ) - nasahiさん» 楽しみなんて言って貰えて嬉しすぎて私がきゅんきゅんしております✨あたたかいコメントありがとうございます (3月19日 19時) (レス) id: 2f80daa520 (このIDを非表示/違反報告)
nasahi(プロフ) - いつも楽しみにしてます✨ソクジン推しなのでソクジンメインのお話が見れて嬉しいです(*^^*)きゅんきゅんさせていただきありがとうございます (3月19日 15時) (レス) @page43 id: 30d7aaf159 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lia | 作成日時:2024年1月23日 5時