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この雰囲気に似つかわしくない言葉に、伸ばした手を止める。
徐に顔を上げたその人は、一瞬わからなかったがよく見れば、今年うちの会社からデビューしたグループの中の一人、キムソクジンさんだと分かった。
一瞬わからなかったのは、事務所内の写真やポスターなどで見た時“涼しげな笑顔の人”だと印象に残っていたのだが、目の前の彼は弱々しく眉を下げた小動物のようだったからだ。
「お腹が減って…」
その言葉に緊張感が解け、ホッと胸を撫で下ろす。
『なんだ良かったぁ。怪我とかしてるんじゃなくて』
ソクジンさんは私の顔から目線を下げ、キンパが入ったビニール袋とランチバッグを凝視している。
ごま油の匂いを感じとったのかな。
随分鼻が効くなぁなんて関心すら覚える。
全く離されない視線と庇護欲を唆られる表情。
節約のために持ってきた、こんな物でいいのかな…。
『あの、良かったら食べますか?』
「え?」
言葉を疑うようなその反応に気付き、
『知らない人間が作った物なんて気持ち悪いですよね⁉︎すみませんっ。あ、でもキンパは買ってきた物だかr…』
「どっちも頂きます!本当に食べていいんですか?」
弱っていた小動物が急に俊敏な動きでその場に正座し、手を合わせて目を輝かせて私を見ている。
意外に元気じゃないか、と安心して思わず笑ってしまう。
『もちろん。どうぞ』
スープジャーとキンパをそっと差し出すと、お礼を言ってそのまま夢中で食べ始めた。
私も隣に腰を下ろし膝を抱え、壁に背を預ける。
こんなにお腹空かせてたんだ。
あげて良かった。
見守る私に気づき、待たせてる事に申し訳なく思ったのか、彼は自分の職業を隠す事なく私に伝えた上で話し始めた。
「何よりも食べる事が好きなんですけど、体を絞らなくちゃいけなくて。その為にずっと鶏胸肉しか食べてなくて。最近はそれが苦痛で、ろくに食べずにダンスの練習ばかりしてたから体が限界だったみたいです」
『食べ物まで管理されるんですね…』
昼間は仕事の合間を縫って大学に行き、ダンスの練習はどうしても夜中になってしまうということだった。
どのくらいの期間そんな生活をしてるんだろう。
食事は私の人生でも大事な時間の一つ。
それを我慢しろと言われたらきっと耐えられない。
人の前に立とうと頑張る人は、どれだけ大変な思いを抱えているのか。
ソクジンさんの日々の生活に思いを馳せると胸が痛んだ。
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lia(プロフ) - nasahiさん» 楽しみなんて言って貰えて嬉しすぎて私がきゅんきゅんしております✨あたたかいコメントありがとうございます (3月19日 19時) (レス) id: 2f80daa520 (このIDを非表示/違反報告)
nasahi(プロフ) - いつも楽しみにしてます✨ソクジン推しなのでソクジンメインのお話が見れて嬉しいです(*^^*)きゅんきゅんさせていただきありがとうございます (3月19日 15時) (レス) @page43 id: 30d7aaf159 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lia | 作成日時:2024年1月23日 5時