2013 ページ39
あの頃の私は入社してから暫く自分のペースが掴めず、事務といっても総務の様な名の無い雑務なども多く、仕事に慣れるまで自分の事は全て後回しになってしまっていた。
こういう業界だから不規則な生活はある程度覚悟してたけど、手入れが行き届いていないかさついた肌や髪を見ると悲しくなったりした。
その日も目覚めると時計の針は既に遅刻ギリギリの時間を指していて、髪を乾かさず寝たから爆発状態で固まっているし、コンタクトをつけたまま眠ってしまったから目が乾燥して仕方無く眼鏡をかけて出社した。
眼鏡は嫌いだ。私の鼻が、より低く見えてしまうから。
一言で言えば、最悪な一日の出だし。
何とか出勤前に“実験失敗博士ヘアー”を整えたけどそれでもゴワつきは隠せず、今日こそは時間をとってちゃんとトリートメントしよう、と決意したものだった。
毎日午後から出社し、就業終わりに事務所が借りているダンス練習室の鍵をかけて帰るのが一日の最後の業務。
事務仕事を終え、鍵掛けへ向かう道すがら夕飯にとキンパを購入した。
お昼 ──と、いっても私の昼食は夕方 ──に食べ損ねた、昨夜の残り物のおでんを詰め込んだスープジャーを持ち帰り、一緒に晩御飯にしようと心を弾ませた。
忙しい今は、食べる事だけが楽しみだ。
明日は何を食べようとかぼんやり考えながら、小さなオフィスも入っている雑居ビルに到着する。
最近練習室の場所が変わった。
元々使っていた練習室は湿気が籠り易い地下に有り、使用していると鏡が曇って逐一それを拭うなど不便な点が多かった為だ。
この時間はどこも人気がなくて、節電の為に廊下の灯りも切られている。
窓から差し込む月の光だけが頼り。
そのビルの目的地である3階の廊下で、目を疑うものを発見した。
……行き倒れしてる人がいる。
うつ伏せで片方は手を伸ばしたように落ちているそれは、黒いリュックを背負った白Tの…男性、のようだ。
こんな都会でありえない情景。
目を擦っても消えない。
これは夢じゃないらしい。
もしかしたら助けを求めるフリをしたひったくりかも。
…いや、建物の中でするなんて効率悪いか。
警戒しながら少し距離をとり、声を掛ける。
『あ、あの…大丈夫ですか?』
反応は無く、静寂だけが残る。
まさか死んでないよね?
思案した後、恐る恐る近づき肩に触れようとした。
「いい匂い」
『え?』
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lia(プロフ) - nasahiさん» 楽しみなんて言って貰えて嬉しすぎて私がきゅんきゅんしております✨あたたかいコメントありがとうございます (3月19日 19時) (レス) id: 2f80daa520 (このIDを非表示/違反報告)
nasahi(プロフ) - いつも楽しみにしてます✨ソクジン推しなのでソクジンメインのお話が見れて嬉しいです(*^^*)きゅんきゅんさせていただきありがとうございます (3月19日 15時) (レス) @page43 id: 30d7aaf159 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lia | 作成日時:2024年1月23日 5時