名前は付けない / JN

Seokjin side× Yoongi ページ36

「最近は、空を見上げる事も無くなりましたか？今度は、“冗談”なんてはぐらかさないで下さいよ」



お節介ユンギめ、よく覚えてるな。


よくできた弟に、そう悪態をつきながら。

一年前には限界を迎えていた自分の思考に思いを馳せる。


あの頃、よく考えていた事。



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一つ我慢すれば二つ得ることが出来る。


でも、その“一つ”が、どうしても手に入れたいものだったら？


世界は、ちゃんと上手く出来てる。

全てを手に入れる事は出来ない。



ひたすら努力する事に、人生の全てを注いでいた。

宿舎、移動車、練習室に現場。
それを繰り返す日々。

この仕事、この仲間に出会えた事は感謝してる。
やり甲斐もある。

応援してくれる人達が増えていくにつれ、失望させちゃいけないって気持ちが大きくなっていった。

自分が勝手に、そうしたいって思っただけなんだけど。



それがたまに、どうしようもなく苦しくさせる。
何かの発作みたいに。



したい事を我慢し続けて、いろんな物を仕舞い込んで。

手に入れられないから初めから興味を失って。

落胆したくないから期待しない。



そうしてるうちに、だんだん痛みにも鈍感になってきた。



人間らしい感情を失くしたら、それはもう、人じゃないんじゃないだろうか。

それって、生きてるって言えるのか？


限界……、なのかな。


感傷に浸ってるような自分が可笑しくて、鼻で笑う。

それにも疲れて。


最近は空を見上げて、そんなことを思う事が増えた。


この空の下には確かにいるはずの、今は何処にいるかわからない君を思い浮かべ、行き場のない思いを空に問いかける。


俺は、あれから。

約束を破ってるよ。



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