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HP1 ページ2

鈍色(にびいろ)に光る剣尖(けんせん)が、俺の肩を浅く抉った。


視界左上に固定表示されている細い横線(ライン)が、わずかにその幅を縮める。


同時に、胸の奥をひやりと冷たい手が撫でる。


横線___HPバーの名で呼ばれる青いそれは、俺の生命の残量を可視化したものだ。


まだ最大値の8割以上が残っているが、その見方は適切ではない。


俺は今、2割がた死の(ふち)に近づいている。


敵の剣が再度の攻撃モーションに入るより早く、俺は大きくバッグダッシュし、距離を取った。



「はっ......」



無理やり大きく空気を吐き、気息を整える。


この世界の"体"は酸素を必要としないが、向こう、つまり現実世界に横たわる俺の生身は今激しく呼吸を繰り返しているハズだ。


投げ出された手には、じっとり冷や汗をかき、心拍も天井知らずに加速しているだろう。


当然だ。


たとえ、俺が見ている全てが3Dオブジェクトであり、減少しているのが数値化されたヒットポイントであろうとも、俺は今確かに己の命を賭けて戦っているのだから。


その意味では、この戦闘は不公平極まるものだ。


なぜなら、眼前の"敵"___深緑色のぬめぬめと光る鱗状の皮膚と長い腕、トカゲの頭と尻尾を持った

半人半獣(はんじんはんじゅう)の怪物は、見た目通り人間でないだけでなく本物の命も持っていない。


何度殺されようと、システムによって無限に再生成されるデジタルデータの塊。


___いや。


今、あのトカゲ人間を動かすAIプログラムは、俺の戦い方を観察し、学習して、対応力を刻一刻向上させている。


しかしその学習データは、今の一個体が消滅した途端にリセットされ、次にこのエリアに湧出(ポップ)する同種の個体にはフィードバックされない。


だから、ある意味では、あのトカゲ男も生きている。


世界に唯一無二の存在として。



「......だよね」



俺のつぶやきを理解したわけもなかろうが、トカゲ男___Lv.82モンスター"リザードマンロード"は、細長い顎に並んだ鋭い牙を剥き出し、ふるる、と笑って見せた。


現実だ。この世界の全ては現実。仮想の偽物などひとつもない。


俺は、右手に握った片手用の両刃直剣(ロングソード)をぴたりと体の正中線に構えた。


リザードマンも左手の円盾(バックラー)を掲げ、右手の片刃曲刀(シミター)を引いた。

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設定タグ:SAO,HQ , 赤葦京治 , パロディ   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:HONEY×BLOCK | 作成日時:2017年4月15日 1時

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