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『先に呪具見に行く?』
加味「うん!A借りてもいい?」
潮凪「もちろん!」
『私がサボりたいからついて行ったとか言うなよ!』
五条「それ聞かなかったら言わなかったわ」
姉さんもほんと大変だよなぁ。呪具を見てもお金が入る訳じゃないのに。ただボランティアとして来て欲しいって言われてはい行きますっていうのは姉さんぐらいだと思う。
加味「そういえばもうすぐ母さん達の命日だね」
『その時は北海道に戻らないとね』
今でもあの日の事は鮮明に覚えてる。
父さんと母さんがいきなり外に走って逃げろ、と怒鳴るものだから泣きながら逃げた。普段穏やかで優しい両親がとても焦っていたので私も何かあったんじゃないかと思っていた。
家の周りに大きくて強い呪霊がたくさんいたり、黒い洋服を着た大人が呪霊を祓ったり帳を下ろしていたり。危険が迫っていたことは幼い私でも分かっていた。
何か武器があれば戦えたし、自分は何か分からなかったけど特別な力があることは分かっていた。だけど普段涙ひとつ見せない姉さんが目に大きな涙を浮かべて震えていたから、この場から離れなければならないことしか頭になかった。
「…Aちゃんと柚ちゃんかな?」
『そうだよ。お兄さんはだれ?』
家から遠く離れた所で姉さんの背中を擦り、落ち着くのを待っていた。すると黒い洋服を着て呪霊と戦っていたお兄さんが私達を見かけて声をかけてくれた。
『母さんと父さんは…大丈夫、なの?』
「……」
『…大丈夫、だよね?』
「あのね、落ち着いて聞いて欲しいんだ」
黒い洋服を着たお兄さんは苦虫を噛み潰したような顔で私達の目を真っ直ぐ見つめた。そして頭を深く下げた。
「…我々の力不足でお父さんとお母さんを助けることができなかった」
『それって、』
「本当に申し訳ございません」
その人の周りにはスーツ姿の大人がたくさんいた。その人達も口々に謝罪を私達に向けて言っていた。じゃあ母さんと父さんは、なんて聞かなくても分かる。もう2人はこの世にいないことを。
何でも呪術師に見つかった呪詛師が殺されるならと近くにいた人達を無差別に殺していたらしい。その意味が分かる頃には、今の義父さんに引き取られていたし術式も完璧に扱えるようになっていた。
もしもあの時術式を少しでも扱えていたら2人は助かったのだろうか、とどうしても自分を責めたくなってしまう。
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作者名:空白 | 作成日時:2021年6月9日 23時