ヴィランになっても (ページ31)

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放課後、スマホでニュースサイトを見たので早く帰ってノートにまとめなきゃと準備を進めていると色んなヒーローをまとめたノートをかっちゃんに取られた。

「話はまだ済んでねぇぞデク」

かっちゃんと絡んでる人達がノートを見て笑ったり呆れていた。別にいいだろ！返してよ、と言うとノートを爆破された。

「酷い…」

かっちゃんは更にそのノートを窓から放り投げた。鼻で笑うと大抵のトップヒーローは学生時代から逸話を残してきている、と話し始めた。

「俺はこんな私立中学から初めての、唯一の雄英進学者っつー箔をつけてぇのさ。まあ完璧主義なわけよ」

僕の右肩に手を置くとキラリという効果音が着きそうなほどいい笑顔で「雄英受けるななぁデク」と言われた。

言いたいことだけ言うと教室を出て行った。

その途中に来世は個性が宿ると信じて屋上からワンチャンダイブとか言い出した。さすがの僕でも言い返そうと振り向くと爆破しながら睨まれたのでまた何も言い返せなかった。

ノートを取りに行くために靴を履き替えて落ちたと思われる場所まで足を運んだ。

『あっ、出久。丁度いいとこに』

「Aちゃん！？何でここに…」

『はい、これ』

タオルで綺麗に拭いていたのは僕のノートだった。それを湿り気がないのを確認してバッグにいれた。

『これしたの…勝己でしょ』

「…」

『無言は肯定として受け取るよ』

「その…ごめん」

『え？何で出久が謝るの？』

「だって…その…」

Aちゃんは緑色の池に入った鯉を覗くようにしゃがんだ。

『出久は何にも悪くないよ。無個性だろうが没個性だろうが派手な個性だろうが、夢見ることは悪いことじゃない』

「そう…なの？」

『うん！…でも、現実もしっかり見なきゃいけない』

数トーン声が低くなって真剣に話しているのはプロの大変さと過酷さをわかっているからだと思う。

無個性がヒーローなんて現実的に考えて無理な話。分かってるけど子供の頃から夢見てたことなんだ。

『中途半端な気持ちで夢を追わせることほど辛いことはないんだよね』

「…うん」

『だから無個性でもヒーローになれる、なんてことは言えない』

わかってた。わかってたけど面と向かって言われると凄く刺さる。

『でもね出久─────』

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