ヴィランになっても (ページ29)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:45,232 hit

28 ページ29

緑谷出久 side

3学期も終わり、もうすぐ2年生に上がろうという時期に差し掛かった。2学期と何ら変わりはなかったな、と思いつつも後輩が出来ることに多少なりとも喜びを抱いていた。

「おい、いつが仕事休みだ」

『待ってね。んーと…来月の5日は休みだよ』

「空けてろよ」

「お、何々？勝己とAデート？笑」

かっちゃんといつも絡んでいる人の発言によりクラスは奇声で包まれることになる。

「そうだよ悪いか」

「……え、ガチなの？」

『ガチだよ』

「2人って…付き合ってる？」

「あぁ」

かっちゃんの「あぁ」という2文字の返事で「えぇ！？」という声がクラス中、いや学校中に響いた。

もちろん僕もその1人なんだけど。

「あーららバレちゃった…A、良かったの？」

『うん、いいの。どうせバレるし』

「そっか。じゃあ今日は真由さんの奢りでクレープ食べに行くぞ！」

『わーい！』

この時にAちゃんもちゃんと学生なんだな、と感じた。いつも大人びていてクラスの皆をまとめてくれる僕達のかっこいいヒーロー、ウィンディア。

仕事と学業の両立はできてなさそうだけどテストではしっかり点数を取っている。勉強してなさそうなイメージあるのにすごい…

やっぱりプロヒーローは天才なんじゃなくて努力の天才なんだな。

『彼女、か…』

「A？頬緩んでるよ？」

『やっぱ嬉しいなぁ』

「うっ…可愛い…」

Aちゃんが偶に見せる緩んだ笑みはその場にいる皆を笑顔にする。かっちゃんでさえも口角が上がっているのだからその威力は絶大なものだろう。

あー…このまま僕に対する嫌がらせもやめてくれたらいいのになぁ。

なんて思っていた僕がバカだった。

・