ヴィランになっても (ページ24)

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「A！」

「おいそこから動くな。こいつがどうなってもいいのか？」

「くそっ…」

ホークスとジーニストは私が人質にされていると分かると動けずにいた。今ここで私を助けたところで中の人達が危ないから賢明な判断だと思う。

「まあお前らがどうしようがウィンディアは殺す」

『わー大変だ』

「こんな時まで能天気なやつだな」

『そりゃどーも』

敵の腰の前に縛られた腕がある。これぐらいの緩さなら私でも解けるはず…アイコンタクトで時間を稼ぐように視線を大袈裟に動かす。

わかったのかジーニストは目を閉じてため息をついた。

「目的は何だ」

「ホークスの人気を下げることだ」

「俺の人気？それ言っていいんだ」

ジーニスト、ホークスの順で敵に質問を投げかける。ホークスは何となく作戦がわかったのか少し乗り気だ。

5分ほどそんなことを続けていると縄が解けた。入口付近から中の様子は見えない。でもそれって裏をかけば中からも入口付近の様子は見えないってこと。

静かに突入すればいける。最悪強引に行っても問題はないわけで。

「それにしても最近のヒーローは随分と落ちぶれたな」

「…なんのまねだ」

「中学生ですらもプロヒーローになれて、体調悪いやつも仕事をさせる。どれだけ人手がないんだ」

「体調…？ウィンディア、もしかして体調悪いのか？」

「今更気づいたのかよ」

ふっ、と鼻で笑う敵のお腹を1発殴った。

「ぐっ…」

『油断大敵って言葉知らない？』

素早く敵の後ろに周り、口を抑えて腕を地面に押さえつけた。

『サイドキックの誰か。こいつ見張ってて』

「はい！」

『ホークスとジーニストは中に入るよ。こうなったら強行突破だ』

ポキポキ、と指を鳴らして中に入った。静かに足を忍ばせて様子を見ると警戒が薄くなっているのか伸びをしたりストレッチをしている。随分と余裕かましてるじゃん。

『OK。ジーニスト、拘束して』

「わかった」

ジーニストは敵の衣服を利用して瞬く間に拘束した。さすがプロヒーロー。縛られていた腕を解くと怖かったのか涙をポロポロと零し始めた。

こういうのは苦手。あとは他に任せよう。

『よーし、任務完了！あとは──』

「おっと…あっつ！熱あると！？」

『や…熱はないです』

「ちょっと誰か体温計持ってきて」

『ま、待って待って！元気だから！やだ！』

私の抵抗は虚しくも無駄となった。隠しきれると思ったのに。くそ。

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