あまくて、ずるい、きみのせい (ページ30)

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来る、と覚悟した

不本意ではあるが、約束は約束だ

もうこれで私の好きな人としてきみと会うのは最後だから

記念受験的な感じで、それを受け入れよう

そう決めて、ぎゅっと目を瞑った

『…んは、なことしたら目ぇ痛くなっちゃうよ』

『ほーら、リラックスして？』

笑ったきみが、目尻を撫でた

いつもと同じ声で

だから、安心してしまった

「〜〜〜…っぅ！？」

なのに、それは

生ぬるくて

優しくなんてなくて

苦しかった

ようやく離れた唇

きらりと光る唇を手の甲で拭うきみを、ぼんやりと眺める

対照的に、意識せずとも止まっていた私の息を、『あらら』なんて言いながらたっちゃんが背中を撫でて元通りにした

『やっぱ早かったかぁ。うぶうぶ乃愛ちゃんに5回もちゅうするのはあれかなぁって思ったから、一回にしてあげたんだけど』

『ふっかぁいので。わら』

言葉にされたことで、駆け巡る怒り

身体が燃えそうなぐらいに熱い

それでも震える足で、なんとか姿勢を保つ

親切心でやってあげたなんてきっと譫言で、

でもその裏に何が隠されているかは分からない

唇を尖らせながら首を傾げるきみが、どうにも憎くてたまらない

届きそうで届かなくて

のらりくらりと私から身を交わすきみは、いつからそうなってしまったんだろう

私が手を差し出すと、笑いながらもいつもしっかり握ってくれたきみは

どこに行っちゃったの？

『んもぉ、そんな怒んないのぉ。ね？ほーら、たっちゃんのお顔みて？だいすきなたっちゃんよ？乃愛ちゃ…

「…もう、おしまい」

それでも追いかけなんてしない

強がりなんかじゃない

これでおしまい

きっと、そんなきみを変えてくれる人がいつか来てくれる

私じゃない、誰かが

『ん？なぁにおしまいって。どったー？具合悪い？あ、ほら俺のベット半分貸したげるからさぁ。一緒に寝よ？昔もよくしてたじゃん？』

「…ばいばい、ふっか」

止まらない小言を言うふっかなんて、見向きもしないで保健室のドアを勢いよく開ける

「…っえ！乃愛ちゃん！？」

去り際に聞こえた焦り声の主は誰だったんだろう？

とにかく、きみから離れたくて

必死に唇を擦りながら、廊下を駆ける

めぐもう来てる?暇してたらラウンジ来てよ

ポケットで小さな振動を感じた