あまくて、ずるい、きみのせい (ページ29)

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『はー…終わった？長ったらしい意思表示』

ひとつ深呼吸をすると、だるそうにたっちゃんが起き上がった

『なぁんか俺には難しくてよく分かんないけど』

『乃愛が俺のこと好きだってことは』

『よーく分かったよ』

私の髪を撫でようとするその手を避ける

危ない…もう崩れるところだった

『あーら、残念』

行く先のなくなったたっちゃんの右手が、大人しくベッドの上に戻る

『まぁなんでもいいけどさぁ』

『約束はちゃんと守ってよ。乃愛』

…や、くそく？

『なぁに忘れたとか言わせないよ？』

『ちゅう』

…！

しまった、忘れてた

…私何回言った？何回この人の前でたっちゃんって

『3かーい、昨日の分も合わせたら5かぁい』

昨日…の分

『ほら、こっち来て？そんな遠かったらちゅうできなぁい』

大人しいわけがなかった右手が今度こそ私を掴んだ

「…、ふっか」

『んぁ、なに？』

「……ごめんなさい」

『へぇ？なにが？俺としては乃愛ちゃんとちゅうできて最高だけど』

「ちがう…」

「昨日、言いすぎてごめん」

「叩いてごめん」

「何にも知らないのに、ふっかのこと貶したこと」

「…ごめんなさい」

腕を離して欲しかったのもそう

こう言えば、ちょっと動揺するかなって

でも、本来の目的をまだ果たしてない私はここから出られないから

なんか…今だって思った

きみに償うのは今だって

『珍しく素直じゃん』

「…へっ」

『別に俺、怒ってなんかないよ？キャンキャン吠えるかあいい犬をちょっと構ってあげただけー』

「…っはぁ？」

『謙虚だねぇ。わざわざ謝るためだけにここに来たの？おにいちゃんしんぱーい。すーぐ変な人に引っかかりそうで』

「…た、ふっか」

『んま、謝罪は受け取るし、ビビらしたならそれは俺もごめんな。ちょっとやりすぎたとは思ってたから』

掴まれていた腕が解放されて、代わりにぽんと頭に乗った重み

…あやま、られた

たっちゃんに

『まぁでも、それとこれとは別』

『はやくこっちきて』

一度離された腕が、するりと頭から降りてきた腕によってまた引かれる

『ごめんねぇ、これだけは俺…許さねぇから』

何に謝っていて

何を許していなくて

何に怒っているのか

だけど、私はいつまで経ってもきみの手のひらの上で転がされてて

どこか期待していて

それが、かわいいものだったことを思い知る