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そうして連れてきてもらった川沿いは、桜が何本も植えられていて、本当に綺麗なところだった
川にひらりと散って流れていく桜も、哀愁があって違う良さがある
「きれい…」
『オーキャンの帰りに一回だけ来たことがあってさ、自分だけ知ってるのもったいないなぁと思って』
「…でも、私でよかったの?」
『うん。乃愛ちゃんがよかった』
「…嬉しい、ありがとう」
真っ直ぐに言葉を紡ぐあべくん
ひとつひとつが丁寧に包まれていて、話す度言葉をプレゼントされているみたい
『俺…一目惚れだったの』
「…へっ?」
『高校二年の夏の試合の時、乃愛ちゃんめめの応援に来てたでしょ』
「あ、…うん」
『その時に初めて乃愛ちゃんの事見てさ、なんか…ずっきゅん、てなったんだよね』
「ずっ…きゅん、」
『ごめん意味わかんないよね、よく佐久間が言っててさ…俺もそれまでははぁ?って感じだったけど、乃愛ちゃんを見た時に、これだと思って』
めぐと知り合ったのは高校二年生からだから、あべくんはその夏から私のことを知っていてくれていたんだ
『佐久間から連絡あってさ…このチャンス逃せないなって』
『なんでって言われたら分かんないけど…さっきカフェ出る時に最後俺らの座ったところ確認してたでしょ?』
「…あ、うん。忘れ物ないか…」
『そういうとこ、…さっきもずっきゅんってきた』
はらっとひとつ、桜があべくんの頭に乗った
何だか天使みたいで
その運の強さにタイミング悪く笑ってしまう
『…ごめん、変…だよね』
「あ、!ううん違うの!頭、桜乗ってて」
『え!?あ、…ほんとだ。俺、今絶対変な顔してるからさ…そっちかと思った』
「ふふ、ううん。かっこいいよ」
『…っ、それはずるいよ』
あべくんがくれるプレゼントに、できるだけまっすぐ返したつもりだったけど、ちょっぴり失敗してしまったようで、彼の顔はゆでダコのように真っ赤
さっきの仕返しってことで許して、あべくん
『だから、友達になって欲しい!』
「…えっ?」
『小学生みたいなのは分かってる…でも、こうやって話して、やっぱり好きだなって思ったから』
『俺の事たくさん知って欲しいし、乃愛ちゃんのこともたくさん知りたい』
…どこまでも真っ直ぐで、真面目
「私、あべくんはもう友達だと思ってたんだけどなぁ」
『へっ?』
「あべくんはまだ私の事、友達だと思ってなかったのかぁ…寂しいなぁ」
『…意外と、いじわる』
「あべくんこそ」
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admw(プロフ) - すみません。一回だけ非公開にしてもらってもいいですか?お願いします!!! (2023年3月6日 19時) (レス) id: f219b66df8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗奈 | 作成日時:2023年3月4日 23時