3.どちらかというと"ふわ" ページ7
【 志摩 side 】
「じゃーん!
今日のお昼はメロンパンで〜す」
「…またかよ」
最近の俺らの昼飯はメロンパンかうどん。
分駐に戻れば陣馬さんがうどんを作っていて、車内で済ませようとすれば伊吹がメロンパンを買ってくる。
「いいだろー。
メロンパン号じゃなくなったんだから、メロンパン食べてないとメロンパン刑事は名乗れないしぃ」
「名乗るな名乗るな」
伊吹がメロンパンの入った袋を抱えて車に乗り込むと、ポケットから何かがヒラリと落ちる。
「なんか落ちたぞ」
「ん?あー、ほんとだ」
あっぶねー。と伊吹が拾ったのは写真で。
その写真は俺も見覚えがあった。
「それ、まだ持ってたのか」
「だぁーってー、捨てらんないでしょこんないい写真」
「いや、言い方が悪かった。
まだ持ち歩いてたのか、その写真」
「いやさ、これ持ち歩いてるとなんか元気もらえるんだよねー。
きゅるっきゅるのハムちゃんときゅるっふわの夏樹ちゃん、これもう最強じゃね??」
伊吹が両手で持ってニンマリと見つめるそれは、いつだかまだ一ノ瀬が七瀬と名乗っていた時代に桔梗さんが伊吹へと譲り渡したもの。
もちろん、事件解決への手がかりとして。
「そういえばさぁ、志摩」
「何だ」
「結局どっちだと思う?」
「何が」
「夏樹ちゃん、きゅるだと思う?ふわだと思う?」
………だいぶ前に、この話したと思う。
あの時はうまくかわせたと思っていたが、覚えてたのか。
「だから言っただろ、きゅるもふわも大して変わらない」
「いやだから変わるって言ったじゃん!」
そう言ってあの時と同じように伊吹が力説するきゅるとふわの違いを右から左へと聞き流し、昼飯であるメロンパンを袋から取り出して一口かじった。
「あっま」
今日の店のメロンパンは、めっちゃ甘い。
354人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2020年10月19日 18時