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カツカツと足音が響く。
私は早足で駅へと向かっていた。
そして……その後ろから、ずっと聞こえてくる足音。
とても気味が悪かった。
こんな経験をしたのは初めてじゃない。
七瀬と名乗っていた時は危険な目にも沢山遭ったし、それが日常だとすら思った時もあった。
だけど……何度経験したって慣れるものでもない、怖いものは怖い。
「ハァ…ハァ……」
チラリと振り返ると、少し離れたところに怪しげな男が見える。
その人もまた、早足でこちらに向かっていた。
さっき振り向いた時もこれくらいの距離にあの人はいた、間違いなくつけられている。
どうしよう、誰かに助けを求めるべき?
それとも桔梗さんのところに戻ろうか。
どこかお店に……いや、こんな時間にやってるお店なんて。そもそもお店自体見当たらない。
その時………
「っ!」
いつの間に距離を縮めたのか、肩に手が置かれ……
ゾワリと体が震えた。
思わず肩に置かれた手を振り払い、私は全速力で走り出した。
待て!という声が聞こえたけど、私は振り切るようにただひたすら走った。
夜道に、カツカツとヒールのなる音が響く。
いっそのこと、靴なんて脱ぎ捨ててしまいたかった。
ギュッと携帯を握り、急いで連絡先の一覧を開いた。
どうしよう、誰に…誰かに……
「っ……!!!!」
勢いよく腕を掴まれ、引かれる。
私の手から携帯が滑り……地面に落ちた。
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作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2020年10月19日 18時