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それから、ハギくんと他愛のない話をした。
今何をしているとか、最近別れた彼女さんの話とか。
「ふっ、あははっ!
そりゃハギくんフラれるって!」
「笑いすぎっすよ七瀬さん!
確かにあれは俺も悪かったと思いますけど…」
「いーや、それはハギくんが100%悪いね」
「………やっぱそうですか?」
「うん」
七瀬、と呼ばれるのはなんだかくすぐったかった。
久住が逮捕されたあの日から、あの人の隣にいるための名前だった七瀬遥香は消えた気がしてたから。
これからは一ノ瀬夏樹として生きていくと思っていたから。
なんだか、懐かしさがこみ上げてくる。
「そういう七瀬さんはどうなんですか?
彼氏とか」
「え〜、彼氏?」
そんなのいない…そう言おうとした時、
「一ノ瀬」
「あ、志摩さん!」
後ろから声をかけられ振り向いた。
そこには飲みに行こうと約束していた志摩さんがいて、仕事終わりに急いできてくれたのかな?とか考えたら自然と笑みが溢れてしまった。
「悪いな、遅れて」
「いえ、お仕事お疲れ様です」
「えっと…どちら様で?
もしかして…彼氏とか、!?」
隣に座るハギくんが探るように志摩さんを見ながら、まさかの爆弾発言。
とっさに止めて志摩さんに謝ろうとした。
だけど…こっちも予想外、
「…だったら、何?」
私の肩に手を置いて志摩さんも爆弾発言をかます。
そして、ハギくんを軽く睨みつけた。
それに驚いたハギくんは、慌ててベンチから立ち上がって私から一歩二歩と離れる。
「あっ、あははっ、
彼氏いたんですね、すみません引き止めて!」
「あ…え…!?」
「ほんと、ありがとうございました!
そんじゃ失礼します七瀬さん!」
「七瀬…さん?」
「うん、また!いつでも連絡して」
慌てて走り去っていくハギくんに、こちらも慌ててバイバイと手を振った。
そしてハギくんの後ろ姿が見えなくなり………
「しーまーさーん?」
「……。」
私は思わず志摩さんをじとりと睨みつけた。
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作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2020年10月19日 18時