のんきな猫と死にたがり 3 (ページ9)

今日:12 hit、昨日:2 hit、合計:82,086 hit

7#9 ページ9

・

『警視庁から各局。ニノ輪署管内。ハサミを持った男が商店街を逃走中。刑事を名乗る男が追跡中との情報。20分前の入電と同じ金杉商店街。』

また無線で連絡が入った。陣馬さんが大熊を追っているのだろう。
無意識にそっちへ足が動いたが志摩さんと伊吹さんに肩を掴まれてしまった。

「なんかAちゃんが行くタイミングわかってきたわー」
「俺も。
　車で追う。お前は特に単独行動禁止」

「…あい。」

急いでメロンパン号に乗り込む。
驚いたことに、志摩さんが出前太郎にメロンパンを再注文してくれていたらしいが、やっぱりご飯より人が優先ですよね、車を出して大熊を追った。

「機捜404から警視庁あて。ハサミ男は捜査中の事件に関係してる。容疑者の可能性が極めて高い。トランクパラダイスから金杉商店街へ向かいます。どうぞ。」

『警視庁了解。』

・

「え、あれって…」

メロンパン号を走らせて数分、歩道で走っているスーツ姿の陣馬さんを見つけた。

「あ、こけた」
「陣馬さん！？大丈夫ですか！」

車を止めて駆け寄ると、死にそうな陣馬さんが、大熊が……！！と遺言を残すぐらいの息も絶え絶えに必死に教えてくれた。なんとか車の荷台に運んであげるとすぐに体力を戻して「あっちだ！！」と指示される。

「いけいけいけ！！」
「右右右！！」
「急げ急げ！！志摩！！」
「早く志摩！！」
「いけいけいけいけ早く！！早く！！」
「そこそこそこ！そこにいる！！」

大熊を発見したのも束の間、角を曲がると見失ってしまった。
にしても伊吹さんと陣馬さんが揃うと凄く騒がしい。耳を両手で塞いだ。

「あれ、いない！あいつどこだよ！！」
「チョロチョロ逃げやがって！！」
「大熊どこだよホントに！！！」
「クソっ！！大熊ぁあ！！！」
「大熊！！」
「大熊ァ！！！！」
「2人いるとうるさい！！！！」

耳を塞いでも2人の声が余裕で聞こえてくる。多分拡声器を通さなくてもサイレンに負けないくらいだ。
車内が動物園と化したとき、車の進路に倒れてる男性を発見した。
車を止めると伊吹さんは飛び降りて

「太郎！太郎！！おい」

と、彼の肩を揺さぶった。
顔に殴られたような生傷がある。

「あ！出前太郎の！？」

「…太郎じゃないです」

話を聞くと、メロンパンを配達しようと私達の車を追っている中で無精ひげを生やした男に襲われたらしい。その時に出前太郎のジャンパーと帽子を奪われた。

→