のんきな猫と死にたがり 3 (ページ8)

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もう一つの資料には強盗の2人の犯人の顔が映っていた。
一人は今回トランクルームで遺体として見つかった…

「ケンさん！本名は梨本健！」

「今陣馬さんが追ってるのがもう1人の大熊邦彦…
　あっ！あの！ちょっといいですか！？」

現場から出てきた鑑識に志摩さんが声を掛ける。

「中にレシートってありました？」

鑑識が持っていた段ボールの中から大量のレシートを取り出すと、志摩さんは一枚一枚確認した。

「…あった。魚肉ソーセージ。」
「それがどうかしたんですか？」
「きんぴらの好物？」
「部屋の中にフィルムとか袋のゴミってありました？」
「いえ、一切、」
「それだ。ありがとう。」

私も伊吹さんも話についていけなくて戸惑っていたが、志摩さんはどうやら幽霊の正体が分かったらしい。

「資料にあった杉並区の強盗現場には、魚肉ソーセージのフィルムが落ちており付着した唾液から大熊邦彦のDNAが検出された」

その説明に私たちはピンと来て顔を合わせた。

「なるほど！！魚肉ソーセージって…」
「きんぴらじゃなくて大熊の好物！？」

「それニャ。」

「ニャーーー！！！」

＿＿＿＿＿

トランクパラダイスの管理室で、7番と同じ契約者の部屋を探した。おそらく大熊も梨本と同じ契約者からここのどこかの部屋を借りているはずだから。
すると、部屋番号48がそれに当たり、私たちは急いでその部屋に向かった。

「開けるぞ」
「お願いします」

志摩さんに続いて伊吹さんと私も中へ入る。
ゴミだらけで異臭が漂い、私は思わず鼻を覆った。

「魚肉ソーセージ…」
「あったな。」

ハンドライトで壁を照らすと、事件からの日付が正の字で記されていた。ここで時効を待っていたのだろう。
10年も、ここで…

「なあ、10年あったら何が出来るかな？」

「……英語がペラペラになれそうだな。」
「うん。」
「プロの料理人」
「いける」
「世界中に刑事ドラマを全部見る」
「いいね。」

「なんでもできそうですね…」

「俺が交番に飛ばされて機捜に呼ばれるまでが、10年。

　10年間誰かを恨んだり、腐ったりしないで、本当に良かった。
　俺はラッキーだったなー…
　大熊の不幸は、10年間ここから1歩も動かず、誰にも見つからなかったことだ。」

伊吹さんは振り返ると、優しい笑みを浮かべた。

「さっさととっ捕まえようぜ！な？」

「そうだな。」
「ですね」

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