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倉田さんと言われた男性もやっと免許証を私達に見せてくれた。
「倉田靖典と言います。
3月に会社を退職したんですけど、退職金詐欺にあって、そこで前から借りてたここに寝泊まりするようになって
あっ、きんぴら!」
きんぴらと呼ばれた先には猫を抱え、スーツに着替えたジュリさんがいた。
「トランクルームに住むのは違法。猫を飼うのも違法だと承知しておりますが、ここでの私は弁護士ではなくコスプレイヤーのジュ…「前置きは良いです。
で、2人の関係は?」
「きんぴらが病気になった時通りがかったジュリさんが見つけてくれて、獣医に連れてってくれたんです。関係と言ってもそれだけで。」
「今日はきんぴらがドアの前にいたから管理人のいる時間に見つかっちゃまずいと思って私の部屋に避難させました。倉田さんの猫だと思ってた。」
「ケンさんに自分の事は誰にも言うなって……」
「隣の人はケンさんっていう名前なんですね?」
「高倉健のケンだって。」
「本名のやついないのかい!」
全員インパクトがありすぎてだんだん頭が混乱してきた。いろんなニオイが混ざって臭く感じるような…とりあえず頭が痛くなりそう。
「なぜホームレスになったのかを聞いたことは?」
「私みたいに、奥さんと喧嘩したんじゃないかなぁ……」
「喧嘩で家出!?」
「だって、退職金詐欺に遭ったこと責められて、」
私達からしたらそんなくだらないことが理由で?…なんて思ってしまうけど、倉田さんからしたら重要なことなのだろう。私は何も言い返さずうんうん、と聞き流した。
「それで、なんで殺したんだ?」
おお、突然の誘導尋問。怖い志摩さん。
冷めた目で見つめると、もっと冷たい目で返された。すみません。何も言いません。
「殺してません!」
「なんで遺体の上に“あんなもの”をかけた?」
「あんな?えっ、何を!?」
「誘導尋問はやめてください。音声、録ってますよ。」
ジュリさんにボイスレコーダーを見せられて志摩さんは「…失礼しました。」と謝った。
笑ってしまいそうになったが志摩さんから鉄拳が加えられそうなため俯いて誤魔化した。
「ケンさん、殺されたんですか?」
「いや、まだわかんない。」
「何か心当たりが?」
倉田さんは見当たらないのか首を傾げたまま黙ってしまった。
「んー、例えば、なにか音を聞いたとか…」
「そういえば!」
「そういえば?」
「いや、きんぴらが騒ぐのは珍しいなって…」
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時