のんきな猫と死にたがり 3 (ページ31)

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いつも帰り支度の遅い伊吹さんが、明日は槍が降るのではないか？と疑うほどに支度が速かった。理由を聞くと、蒲郡さんの家に行くらしい。そして「ばいばーい！」と言って颯爽と帰って行った。
401も任務を終えて、今分駐所には私と志摩さんの二人だけ。
志摩さんは休暇日に会ってくれないから今がチャンス。

「Aは帰んないの？」

「志摩さんと話したかったことがあるんです、2人で。」

志摩さんの目が見開かれた。何か思い当たる節があるのか。
ならば話は早い。

「伊吹さんの様子が変だと思って…」
「そっちか」
「え、そっちってどっちですか」
「いや、なんでもない。
　で、伊吹が何だ？」

「伊吹さんにずっと違和感が「なんだこの分駐所は！！」え…？」

………幻聴だろうか。

刈谷さんの声が入り口から聞こえてきた、気がする。でも振り向きたくなくて志摩さんを見ると、面倒くさそうな表情をしていた。どうやら幻聴でも幻覚でもなさそうだ。
なんてタイミングの悪い、伊吹さんの言葉を借りるなら感じ悪い魔人だけでなく空気読めない魔人だ。

「なんだその眼は」
「なにも？」

高い目線から見下されてつい反抗的な目つきをしてしまったが、すぐ愛想を振りまくよう笑顔を張り付けた。ここは穏便に行くのが良い。

「バカの相棒はどうした」
「退勤時間なんで帰りました。あと、あいつはバカですが、バカではありません。
　嫌味言いに来たんですかー？もう暇だなぁ」
「連続殺人じゃないって進言したんだって？」

「…事実は事実として伝えるべきです。」
「1人だけ情報握って他の奴を出し抜く。お前が昔捜一でさんざんやって来たことじゃねぇか。」

「その節は、本当にすみませんでした。俺が間違ってた」

「今度はどんな魂胆だ？」
「本心です。」

突然「これ以上邪魔するな！」と刈谷さんが志摩さんの胸ぐらを掴む。
放したかと思えば今度は、言われたこと以外やるな！と続けた。禁止事項多くないか？
捜一様はそんなに…前にもやった気がするなこの自問自答。

「…蒲郡の話も当てにすんな。」

「え…蒲郡さん」
「まさか家に押しかけたんじゃ……」
「あぁ。経歴から何から何まで調べて行ったよ。
　時間の無駄だった、ただの耄碌ジジイだよ。」
「勝手に押しかけといて…」

「認知症の症状、そんなに出てましたか？」
「はぁ？事故だろ。
　事故でボケちまった。」

その言葉に私は前に感じた違和感が、ある確信に変わった。

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